草食とか肉食とか

★前日のエントリを見てびっくり。なんか違う色の☆がついてる! なんじゃこりゃーと思ったら、カラースターというのがあるのですね。こういうどうでもいいかわいいサービスは好きです(そして緑の☆をくださったTTTTさん、ありがとうございます)。


★こないだある編集部から「草食系男子と肉食系男子のどっちが好きか、アンケートに答えてください」というメールが来たので「いやです」と返事して、そのおとなげのなさに自己嫌悪も含めて最悪の気分になってしまった(木村さんほんとすみません)。


 私はその編集部のみなさんが好きだし、その企画の一環でインタビューする仕事も喜びいさんで受けているんだけど、インタビューとアンケートは違う。ある人に「草食系」とか「肉食系」とかいうキーワードをぶつけて話をきくのはいい。その人の発言や考えがちゃんと出てくるし、エロい話もできるし、ポジティブな肉欲を見せつけてもらうのはすごく楽しい企画だと思う。(誤解のないように言っておくけど、編集部の人に対しての悪意とかいらだちとかは一切ないです。みんな大好きだし、エロ本でやると楽しい企画になるとも思ってる)


 「草食系」とか「肉食系」とか、「文化系」とか、わたしは全部吐き気がするほど嫌いなんです。何がきらいかというと、当事者でもない人たちが頭の中だけでこねくりまわして他人事を分析して面白がっている感じが不愉快なんです。自分が当事者で書いている人のものは別としてですけどね。


 「草食系」を理由にセックスしない、または「肉食だから」を理由に浮気しまくる人がいたらどうしますか。とか問うてもしょうがないんだけど、人間だから草食も肉食も淫乱も純情もないし、全部あるのが人間だし、そういう雑な分け方をして「人種」をつくりあげていこうとするのが、とてもいやだ。文化系とか言ったってみんなセックスしたりクラブで踊ったりしてんじゃねえの。夏フェスとか行ってんじゃねえの。それは肉体性があるってことじゃないの。文化系か体育会系かって分け方はただ便宜上の、わかりやすくするためのものだってことぐらいわかってるし、草食とか肉食とかも単にそういう考え方って新しくておもしろいよねってことで流通している言葉なのも、わかってるけどさ。


 ただ「それってそんなに面白いかよ?」って思うんですよね。数年後には死語と化してるような一過性の言葉をいじりたおしてもてあそんで、面白いのかって。とりあえず私には面白くない。重ね重ね言いますけどインタビューなら面白いんですよ。人がこのことについてどう思ってるのか聞くのは面白いし、興味ある。けど、こんな理屈こねくりまわして、人を勝手にカテゴライズして、何が面白いの? 「非モテ」とか「非コミュ」とか、便宜上名前をつけたほうがわかりやすいとかいうのはわかるんだけど、「非モテ」に属すると自分で思ってる人だって、「非モテ」以外の面なんていっぱいあるわけで、実際はすごい豊かな生活なのかもしれないでしょう。逆に恋愛でずたぼろになって仕事もできない、過食が止まらないとかいうことだってあるわけで。一個の言葉だけ取り上げると、ほかのことがすごい見えなくなる感じがする。それに処女じゃないわたしでも、非モテ非コミュの話題に共感できるところはある。孤独だからね。安易なカテゴライズは、そういう他者とのコミュニケーションを無言で奪っているような気さえする。ないところにわざわざ人種の壁つくってどうするんだ。あ、壁を感じてるから人種のせいにしたいのか。そうなのかもしれないね。


 でも、草食の皮をかぶった肉食男とか、気持ち悪い奴らがいっぱいのさばってんのに草食とか肉食とかあんま安易に考えないほうがいいよと思うんですよ。本当に草食であっても、別にこっちだって男の人とセックスや恋愛をするためだけに話したり友達になったりしてるわけじゃないしさ。どっちでもいいんじゃないの。私だって性欲が枯れるときが来るかもしれないし、そしたら肉欲があんまない人とつきあうほうがいいと思うかもしれないし、性欲が枯れなくても、一緒に人生を歩むパートナーとして、肉の関係のない男性がいいと思うこともあるかもしれない。草食が増えようが肉食が減ろうがなんの問題もないんじゃないかと思うし、少子化ですら問題じゃない(と、私は思ってる。むしろ「少子化は困るから女は子供を産め!」と言われることのほうが問題)。自分の恋愛やセックスライフがうまくいかないことに問題はあるけど、それは社会的ななんかのせいにできるようなものじゃなかったりする。相手が「草食だから」と思うとラクになる人もいるんだろうけどね。


 当たり前だけど草食系だろうが肉食系だろうが文化系だろうがみんな個人でみんな心があってそれぞれに恋愛や友情や人付き合いや趣味の世界やいろんなものがあって、バラバラなんだよ。すごい一生懸命勉強してる人がたまたま生まれた世代のせいで「お前はゆとり世代だから」とか言われてたら悲惨だと思わない? 単に女の子に手を出す勇気がないだけなのに「草食だから」とか言われてたらどうなのよ? そういう合間の人情が、かわいいもんだと思うけどな。すごく好きなのに家に泊まりに来てもキスもできないとか、ヤリチンが彼女の浮気に本気で傷ついてたりとか、それでも浮気をやめられないとかさ。ダメだけどかわいいじゃない。恋愛をする気もなくて、しないほうが平和で楽しい生活なら、それでもいいじゃないの。まぁ、そういうことを言わずにおおまかな特徴をとりあげて論じていくのが社会学というものなのだろうし、それは意味があることなんだろうとは思うけど、真剣にそこに何かのカギがあると思って論じているならともかく、それの言葉だけをとりあげてもてあそぶような風潮は、きらいだ。まぁ雑誌ってそういう部分はあるから、楽しいことには乗りたいと思うし、遊び心の部分ではきらいじゃないときもあるんだけど、このへんのボーダーラインはうまく説明できないな。ギャラの問題ではないことは確かです。アンケートじゃなくて文字数くれればこのまんまのこと書いただろうねってことかも。「どっちが好き」とかじゃないよってことだろう。


 草食だろうが肉食だろうが男だろうが女だろうが面白い人は好きだし、友達は友達だよ。それだけのことでしょ。って、たかだかアンケートにこんな熱くなるのがバカなんだけど。


 「理屈で考えて面白い」ことなんか、クソだよ。この「面白い」って言われてる多くのことがらの「つまらなさ」を、どう説明したらいいんだろうか。私はそういうつまらないことに関わりたくない。ムーミンの話の中に、ミムラが自慢のつやつやの髪をほどいて、パーティーの夜にダンスをする場面がある。ミムラは髪を光らせながら激しく踊って、踊りながら靴をぬぎすてる。これ、ものすごぐっとくる場面なんだけど、これの何がそんなに魅力的なのか、なんも説明なんかできない。でもこれはものすごく快楽的な場面で、最高なんだ。それだけはわかる。そういう快感を知らなすぎると、へんな理屈の考えに巻き込まれて、悩まなくていいことで悩んだり、分析したってしかたないことを分析したり、そういうへんな方向に行っちゃうんじゃないのかな。


 明日は根本敬さんの本を買いに行こう。