『日曜美術館』&『ゴンゾウ』

★リニューアルした『日曜美術館』の新キャスターに就任された姜尚中さんの声が『人妻不倫旅行』(ゴーゴーズ)の高橋浩一監督の声にちょっと似てる。声質っていうより物腰の柔らかさかなぁ。ゲストの村上隆が悪声なもんで、余計に姜尚中の声にうっとり……。ず、ずっと聞いてたい! 姜尚中の人妻不倫旅行あったら絶対買うわ!(ありません)


★再放送で『ゴンゾウ〜伝説の刑事』を見てるんですが、これむちゃくちゃ面白いですね。『相棒』と同じスタッフなのか。脚本の古沢さんという人がすごくいいよ〜と聞いて観始めたんですが、ほんといいです。『相棒』にも、大人の男女のおつきあいのなまなましい感じってあるんですが、『ゴンゾウ』はもっと登場人物の年代が若いのもあって、もっとビリッと来るほどセクシーです。


 最初は筒井道隆が昔関係のあった大塚寧々を無理矢理抱きしめようとしながら言う、
「無理矢理されるの好きだったでしょ? 舌の入れ方はあなたに教わったんだ」
 というセリフにカーッといろんなところが熱くなったりしてたんですが(おとなの話題ですみません)、この後、こんなもんじゃなかったね。


 ラスト3話をまだ残してますが、今のところセックスシーンがあるわけでもない、7話まででキスシーンはたった二回。なのにすごくセクシーなんですよ。誰が、とかじゃなくてみんなが。全員が大人で、社会人としての顔を持っていて、その場ではそれらしく仕事の顔を持っている。その人たちが「個人」の感情や、「個人」の顔をむき出しにする瞬間が、セクシーなんです。今までにも、ラブシーンもないドラマなのになぜかドキドキしてしまうドラマというのはあったんですが、この『ゴンゾウ』で、エロっていうのはラブシーンほぼナシでも演出できるもんなんだ、とハッキリ気づかされました。しかもその最初のキスシーンのエロいことよ。愛がとか、性欲がとか、語ってんのばからしくなる激情のほとばしり具合がたまらず、舌遣いに見とれてしまいました。


 『ゴンゾウ』は、話の構成や演出もただひたすら文句なく良くて(最後の主題歌まで良くて、その流し方、スタッフロールの入り方もいい)、伏線の張り方、登場人物間の緊張感もエロさに貢献してますね。いや、エロがメインのドラマではまったくないんだけど……。刑事ドラマだし。でも主人公がただの「伝説の刑事」じゃなく、生身の男の部分をむき出しにする場面があって、そこがもうたまらないわけです。説得力なんてもんじゃなく否応なくドラマの世界に引きずり込まれる。内野聖陽、いいですね。こんな演技をする人なんだなぁ。


 ちなみに筒井は寧々タンといい感じになってきた内野に向かって「昔(寧々と)付き合ってました。いいですよ、彼女」と言い放つ場面もあり「な、なにが『イイ』んだ!! このゲス野郎!」と赤面しながら毒づいてしまいました……。私の中ではドラマの展開も楽しみですが、鬼畜冷酷系セクシー男・筒井と誠実ワイルド系セクシー男・内野のセクシー一騎打ちがもうひとつの見所となっております。この文章で何回セクシーって書いたんだろう……。いや、セクシーはともかくものすごく面白いから、ぜひDVDでご覧になるのをおすすめします。再放送はものすっごい画面に宣伝が入りまくってかなりうっとおしいんで、あんまおすすめしないですよ。


 しかし、『ゴンゾウ』を観ていると、おとなの世界って、あやうくてやらしいもんだなと思います。モテのための作戦とか何なの? 知らねーよって気分になります。


 「裸を見たい」って、ふしぎな欲望だよねぇ。ほんとは裸が見たいんじゃなくて、その人の普段見せない顔が見たいのかもしれない。見ても、見せても、それがそれ以上のことにならなかったり、嬉しかったり胸が疼いたりするような意味での良い秘密の共有にならないこともあるけど。そういうつまんない思い出をつくらないために「簡単にセックスするもんじゃないよ」って言葉は、言われてるのかもしれないね。


 AVでは観る側の人はもちろん「裸を見る」ことに欲情するんだろうけど、AVの世界の中にいる人の間では、男でも女でも「裸を見る」ことはできることも多い。多いから、いっぱい見てると麻痺するでしょとか、よく言われるんだけど、なんかね、裸ってそういうもんじゃない気がするんですよ。仕事のセックスでもやらしいもんはやらしいし、裸を見ても、まだ裸を見たいってことがある。そのことを、愛と呼ぶのも恋と呼ぶのも、性欲と呼ぶのも偽善や偽悪で、全部間違っていて、もっと当たり前の感情なんじゃないかと思います。


 裸を見ただけで、その人のことを全部知ったかのように思うのも間違いだし、裸を見てないのにものすごくうしろめたい関係というのもある。私がエロを好きなのは、そういうところが好きなのかもしれないな。こわいもんだけど、これ以上にドキドキすることなんてあまりない。一流の表現は、芸術であれなんであれ、生身のその人が目の前にいるような、人間と対峙している感じ、生身が匂い立つ感じっていうのがあって、やっぱりエロいものが多い気がします。いや、そうでないものもあるかも。うーん、でも、自分が好きなのはそういうのが多いかな。セクシャルな意味での欲情はしないまでも、ダイレクトに何かが伝わってくる瞬間って、その感覚に近いものがある。誰かの秘密を見てしまったような、そういう感じ。