2009年ベスト3

★まったく誰のニーズもありませんが、今年のベストテンみたいなのがいろいろ発表される時期なので、本当は今年よかったAVのベストとかを書くところなんでしょうが、なぜかエロライターのくせに今年よかった美術展ベスト3を書いてみたいと思います。猫が魚のベスト3は選べない(魚はどれも好き〜みたいな感じ? っていうか主食だしみたいな。みたいなって二回書いてさらにこのあともう一回書く語彙ゼロぶり)のに、またたびなどのたまに味わう嗜好品については情熱的に語る(語るのか)みたいなものだと思ってください。以下順不同のベスト3。



マーク・ロスコ展(河村記念美術館)


 なんといってもロスコ本人が生前希望していた展示の形をできるだけ忠実にやった「ロスコルーム」が圧巻でした。あの絵の意味とかそういうことはまったくわからないのに、ただ何か強いものが伝わってくるというすごい体験をしました。ふるえる衝撃体験でした。それは「画家が生前に望んでいて、ずっと叶わなかったことが叶った」という、そういう物語の感動ではなかったということを書いておきます。私は先に絵を見て、そのあとでロスコの書簡(どういう形で展示をして欲しいかが詳細に書いてある)を読みました。あの書簡がきちがいじみているとか、あんな人の相手をするのは大変だと思う方もいらっしゃったかもしれませんが、あの展示を見たあとでは、あれぐらい細かくしつこく「絶対にこの展示の形でないとダメだ、意味がない」と言いつのる意味がよくわかりましたし、当たり前のことを当たり前に言ってるだけなのに理解されないということは、本当につらく大変なことだっただろうと思いました。人に聞いた話では、テート・モダンのロスコルームはもっとすごいらしいので、行ってみたいなと興味が湧きました。


メアリー・ブレア展(東京都現代美術館


 メアリー・ブレアの絵は好きだから見て嬉しいのは当然ですが、時系列に絵を展示してあったことで、特に初期作品についてはなぜこんなつまらない絵を展示するの? と最初は思いましたが、そのわりと普通っぽい、あまり面白くない作品の中にも中期・後期につながる色彩感覚や構図の片鱗が見え、どのような過程を経てあのすごい絵が出来上がっていったのかがよくわかって、まるで物語を見ているかのようなスリリングな体験ができました。最後がショッキングなので後味は決して良くはないのですが、そうなった理由や絵の背景について説明をしすぎない姿勢もいいと思えました。ひどい言い方かもしれませんが、メアリー・ブレアの人生や絵の背景は二の次で、あのすばらしい絵がすべてでいい、と思いましたし、メアリー・ブレアの人生について想像したり、考えると怒りを感じるようなことも多くありましたが、それと絵についての評価は別です。別だから引き裂かれる人もいるでしょう。そういうことを考えると苦しい気持ちになりますが、そういう重く苦しいものを並べ置いたとしても、絵のインパクトが圧倒的に勝り、絵のもたらす多幸感が場を支配していたと思います。彼女の作品を観たければ、いつでもディズニーランドで『イッツ・ア・スモールワールド』という最高傑作が観れるのは幸せなことです。今はクリスマスバージョンになってるそうです。結局制作されなかったという幻のアニメーション『ベイビー・バレエ』のための一連の作品がとてもかわいらしく、動いている絵を観たいと思いました。今からでも作ってくれたら嬉しいです。


・オブジェの方へー変貌する「本」の世界(うらわ美術館


 これはまだ展示中です(http://www.uam.urawa.saitama.jp/)。ワンフロアの、そんなに規模の大きくない美術館で、それほど期待していなかったのですが、はずれというとアレですがつまらない作品の率が異常に低く、期待してなかっただけに興奮しました。「本」という概念と理屈で戯れるような展示だったら、ここまでは興奮しなかったと思います。「本」の本質と戯れているような、っていう理屈の言葉を凌駕する発想の跳躍みたいなものが見えて、ひたすら快感でした。路線検索してまで浦和に行って本当に良かったと思いました。私は本を読むのは好きですが、本という「もの」についてはさほど思い入れがないほうだと自分で思っていたんですけど、そういう問題ではない展示でした。本だと思ってナメてかかるとがっつりやられて興奮するので、これから行かれる方はできるだけナメくさった気持ちで行かれるといいと思います。打ちのめされてぼーっとしますよ。



 私は芸術についてまったくの素人なので、知識や素養がなければ楽しめない・良さを感じられないという類のものは、観ていたとしても良さが理解できていないでしょうし、そもそも興味が持てていないと思うので、ずいぶん雑なベスト3ですが、そのぶん素養のない人が観てもすごさは伝わるものばかりだと思います。


 私は仕事がエロなので、エロ以外で興味のあることは全部趣味や現実逃避の遊びのようなものだと思っていた部分がありましたが、今年はさまざまな展示や音楽や読書を通じて、それらのものが趣味や現実逃避などではなく、自分にとってとても大切なものだと実感できました。誰に感謝したらいいのかわかりませんが、私が今年触れた、エロを含むさまざまな作品を作ってくれたすべての方に感謝の気持ちを捧げます。ありがとうございました。



★そしてさらにエロとまったくなんの関係もないであろう話題を頭でもおかしくなったのか続けてみます。以下、今年買ったファッションでのベスト3、順不同です。


・guri guriのバッグ


 日本のブランドで、二人のデザイナーが海外でヴィンテージの素材を仕入れて制作しているとお店の人に聞きました。ネットで探すとロマンティックな雰囲気のラブリーな小物もありましたが、私が見て買ったのは今年の秋に出た80年代ふうのネオンカラーや光る素材を使った、バッヂや羽根がついているものです。そのときによっていろいろな作風に変わるのですか? とお店の人に質問すると「デザイナーがマイケル・ジャクソンのファンで、彼が亡くなったので今回はこのような作風になったのです」と教えて下さり、その瞬間店内放送でたまたまマイケルの曲がかかるというマジックが起きました。VIA BUS STOPで購入。アクセサリーもあります。


Q-Potのアクセサリー


 何をいまさらという感じですが、今度携帯電話も発売される、お菓子をモチーフにしたアクセサリーのブランドです。お菓子をモチーフにしたアクセサリーは今は流行って当たり前のものになり、似たような感じのもっと安いものもたくさん出回っていますが、Q-Potには本物の風格と意志があります。ただの「お菓子のにせもの」ではないと思います。一見チープなのに値段は高いですが、高いだけのことはあるというか、私には納得の値段で、ものによってはたとえそのとき自分が買えない値段でも安いとすら感じます。すばらしい発明のような何かがあって、身につけたい、手元に置いておきたいと強く思うものがあります。原宿に路面店があります。


・COSMOの靴


 これはパリに行ったときに二足買ったブランドで、よく正体はわかりません。この(http://images.google.com/images?client=safari&rls=ja-jp&q=COSMO+SHOES&oe=UTF-8&um=1&ie=UTF-8&ei=JEsdS7vXHZPi7AP9hanMDw&sa=X&oi=image_result_group&ct=title&resnum=4&ved=0CCcQsAQwAw)中の「COSMO PARIS」と表示されている靴がそうです。決して高いブランドではなく、日本の値段にして15000〜20000円ぐらいでした。パリに到着してわずか3時間で二足買って買い物予算の半分が飛びました。何の悔いもありません。ギャラリー・ラファイエットという大きなデパートの地下で購入。ヒールが高く、脚がながく見えて長時間履いてると足がめちゃめちゃ痛くなりますが、何の悔いもありません。ありませんとも! 初めて靴コレクターの気持ちがちょっとだけわかった気持ちになりました。「パリで買った」とか書いてオシャレライフを送っていることを演出するつもりではありません。けどそんな風に見えたらすみません。全然オシャレライフじゃないです……。何の文化も吸収せずに帰ってきました。美術館の入り口でチケット売り場が別にあることに気づかずに入ろうとして入り口の人ともめていたら「君が何をしたいのかわからない!」と言われました。どちらかというと日本の恥みたいな存在です。パリのコーヒーとパンはすごいおいしかったです。オシャレじゃなくてもパリは楽しい街です。