★『借りぐらしのアリエッティ』観ました。これ、いままでのジブリ映画の中でいちばんいやかも……。ほかのジブリ映画の中に「いや」なのはないので、これだけが例外的に「いや」なんですよね。なぜかというと、最初から最後までずーっとイヤな奴で表情がものすごく気持ち悪く描かれている人物がいて、その人が出てくるのが不快なんです。日常から離れようと思って観たのになぜ意地悪な家政婦のみにくい根性をえんえん観なければならんのだ。そのうえ最初から最後まで話にかなしいムードが漂ってるし、男の子の内面もいまいち見えない。そしてコミカルな部分がない。しずむ。


 って思ったけど、私が駿イズムにひたりきりすぎて、駿が監督でない作品を受け入れられないだけなのかも。でも、ふつうに映画として考えても、そんないいとは思えないんだよな。


 映画館でハリー・ポッターの予告編をやってたんだけど、ハリー・ポッターなのに魔法でガンガン素敵なアクションを繰り広げたり、キラキラしたシーンはまったくなくてひたすら暗かったので、こういうシビアな雰囲気が今の時代の流行なのかな……? とちょっと思いましたとさ。CMの中でいちばん観たいと思ったのは『キャプテンE.O』でした。キラキラしてて派手で楽しいから……。


 「夢のある映画」とか言う場合の「夢」って言葉が、いい感じにやすっぽく聞こえるのが、今は好きです。安い夢でいいから、ありえないくらい派手で素敵な夢を見せてほしいものです。


アリエッティ後、終電近い時間にモツ鍋を食べてたらガラガラの店内に10代後半〜20代前半ぐらいの男女のカップルがいて、最初は(女)「私結婚願望ハンパなく強くて〜、次彼氏できたら絶対結婚する! 普通のサラリーマンと結婚する!」(男)「おう、絶対しろよ! 俺も○○ちゃんにはマジ幸せになって欲しいから、そんなんなったら応援するし!」とか言っててカップルじゃないのか……と思ってたら、(女)「あっ、さっきの店にハンカチ忘れた! すっごいかわいいハンカチなんだよ、バーバリーのピンクので……」(男)「取り行く?」(女)「やだ行かない」(男)「なんで? 行こうぜ。じゃあ俺行ってきてやるよ」(女)「やだやだやだ行かない! 行くんだったら一緒に飲んでたほうが全然いいもん!」(男)「俺すっげー恥ずかしい告白していい? このテーブルの足、○○ちゃんの足と勘違いしてさっきまで足で触ってた(笑)」とか言い出し、(男)「じゃあ乳首見せてよ」(女)「え〜ちょっと何言ってんの〜」(男)「じゃあパンツ見せて」(女)「え〜恥ずかしいなぁ。ちょっとだよ。チラリーン」とかやりだして連休だし明日休みだしもう夏だし今夜絶対そのパンツ脱ぐだろ! と思いながら何かをモツ鍋にぶつけるように食べてたら食べすぎてふらふらになりました。


 どうせその「やだやだやだ」がだんだん喘ぎ声に変わってくわけだろ。結婚したいとか言いつつ来週には「彼氏っていうか〜、つきあってるかわかんないんだけどそれっぽい人がいて〜、でもちゃんとした仕事じゃないし……」って女友達に相談しつつその男に心もからだももってかれてんだろ。「彼の気持ちがわかんない」って言いながらセフレ扱いされてる現実から目を背けて女友達にグチりつつ電話が鳴るのを待ってせわしなく二つ折りのケータイ開いて、男は男で「楽しくつきあいたいだけなのに、○○ちゃんは俺に何求めてるわけ? 俺まだ結婚とか考えらんないし、つきあいで合コンとか行くことだってあるしさ」とか言いながらなんで女ってつきあうとこんな重くなんの? なんで泣くの? モツ鍋屋でじゃれてた頃は楽しかったよな、あの時すっげー興奮したよなぁって今夜のことを思い出すんだろう。


 ちゃんとした恋と呼べなくても、そういう下心と欲望とさびしさがからみ合うやりきれない感じが、いくつになっても人の心をかき乱す。肉体のことっていい。傷をつけられたところに嬉しい気持ちいいインクを流し込まれて入れ墨みたいにあとが残る。そのうちただのかさぶたになってそれをめりめりひっぺがしてあたらしい皮膚になったところを、あたらしい男のひとにさわってほしくなるんだ。かさぶたのあとの、ひきつれたような皮膚を、きたないと言われたらどうしよう、とかって思いながら。


 夏のあとには秋がくるから、安心してみだれまくるといいんじゃないですかね。