★「ブログが更新されてませんが元気ですか?」「生きてますか?」というメールが知り合いから届いたときは「やだ〜心配してくれちゃってウフフちょっと嬉しい」みたいな気持ちでニヤニヤしながら元気ですよメールを送ったりしていたのですが、ポット出版のサイトに元気かどうかの問い合わせメールが来たと聞き、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました……。ごめん、申し訳なくなるほど元気に生きてます。魚の切り身3切パックを全部一人で食べたり、これからいただきもののフォアグラの缶詰食べたりするぐらい元気! すみません。読んでくださってありがとうございます。


 しらじらしく最近の出来事などを書いてみると、10月の終わりから一週間ほどニューヨークに旅行に行ってきました。私は旅行をするのが好きで、たいていどこに行っても「すごい楽しい! ここ好き!」という変なテンションになり、「ここにしばらく住んでみたい」とか思うこともときどきあるのですが、なんだか今回の旅行は違っていました。


 ニューヨークが嫌いなわけではないし、むしろ今思い出すと「あそこにも行きたかったなぁ」「わざわざどこに行く、とかじゃなくあてもなくフラフラ散歩してまわりたいなぁ」とか思うくらいなのに、ニューヨークにいる間は、楽しいのにどこかで気持ちが沈んでいった。


 いつもは、海外に行ったというだけで限りなく自由な気持ちになれるのに、気持ちは晴れず、逆にどんどん不自由な気持ちがこみ上げてきた。「世界中どこに行っても自分は自分でしかないし、自分の性質も過去も絶対に消えずについてまわる」と、当たり前のことを思った。息が詰まりそうになった。


 たぶん今までは、知らない国に行けば自分の名前も過去も捨ててまっさらな自分としてその場に存在できるような気分だったんでしょう。「名前も過去も捨てて」って若干昔の歌謡曲的な感じなのが三十路クオリティですけど、それを「捨てられない」と気づいて閉塞感や息苦しさを感じるなんて、どれだけ自分が嫌いなんだって思いました。そんなに嫌いじゃなくなったつもりだったし、受け入れたつもりだったんですけどね。


 だいたいのことは受け入れて、好きになったつもりでも、私は昔、ニューヨークでした仕事で「ものすごく仕事ができなかった」ことがありました。よく内容を掴めていなかったし、今思えばありえないふるまいをしていた。思い出すと冷や汗の出るような、胃の中に消化できない異物が入っているみたいな気持ちになる仕事です。いくら後悔してる反省してると言ったところでつぐないなんかできない。


 そんな失敗をした、ということは自分の中でもかなりシリアスに嫌いな部分です。三十路だとかモテないとかいうことは、そのことに比べるとぜんぜんたいしたことない。イヤだなんてそんな思わないし。仁義にもとる部分とか、人に知られたら恥ずかしいと本気で思うようなことが、私には過去にあったし、もう二度と絶対そんな失敗をしないとは言い切れない。その最中は自分がひどいことをしてるなんて思ってなかったし、真剣にやっていたんだから。


 「恥」っていうのは、こんな気持ちかなと思います。誰にでも失敗はあるし恥ずかしい過去のひとつやふたつある。それはわかってます。他人のそういうあやまちや恥を責める気持ちはない。けど自分のことは責めてしまう。


 でも、そんなのももう、いやなんですよね。どこに行っても何をしても自分の悪かったところを思い出して果てしなく落ち込むなんて、健全じゃない。いやなところのある人間は、四六時中罪の意識を背負って生きていかなきゃいけなかったり、何かを無邪気に楽しんだりしちゃいけないのかって考えたら、うーんと思います。悪いところは消えてなくならないけど、ずっとそんなふうにしなきゃいけないんなら、ごめん私人間的に最悪でもいいからいやなこと忘れてその日その日を楽しく過ごしたいよ。日本にいても日本にいなくても。


 こういう「自分が間違ったことをした」という罪悪感はわりと万国共通で、だから人は誰かに許してくれとかごめんなさいとか何度でも謝って許しを乞うたりするのかなーと、帰りの飛行機の中で『SEX and the CITY2』を観ながら思いました。許しを乞う人たちが出てくる映画。着陸の前に脱いでた靴をはこうとしたら、靴の中に指輪が入っていて、前の席に座っていた黒人さんが落としたものだったらしくほっとした笑顔でお礼を言われ、うれしい気持ちで飛行機を降りて成田から家に帰って靴を脱ぐと、指輪が入ってなかったほうの靴の中から2ドルが出てきました。お、お礼!?


 というわけで元気にいけしゃあしゃあと生きてますが、ぼんやりしていてしばらくあまり更新しないと思うので、どうぞご心配なさらずに。実は『相棒』にいまさらハマっていてシリーズ全部観るマラソンを始めてしまったのでヒマさえあれば『相棒』観て半ば廃人のようになっているんですよね(2日間で1シーズン分観た)。と、最後にいちばん大きな声で言えないようなことをボソッと告白して広大なネットの海のもくずと消えます……。