思いきりミーハーな人生

mamiamamiya2006-12-13

★弟よ! 弟よ! 弟よ! と三回書くほど興奮する出来事がありました。めえちゃん、いや姉ちゃん(今本気で打ちまちがった)、マイ・アイドル、マイ・ヒーローのロナウジーニョを生で見てしまいました。いや〜、なにごとも願えば叶うもんだね。

 トヨタカップで来日するという話を知ったのは、ワールドカップ直後でしょうか。あんまり騒がれてる様子もなかったので、秋頃には「すべて私の妄想だったのでは……?」と来日自体を疑い始めていたのですが、ホントに来たんですよ。

 で、もちろん試合のチケットなんか即完売なワケです。でも来日しているなら一目見たい。ロナウジーニョが日本にいるのに仕事なんかしてられるか! という心の叫びを平たい胸に隠し、「どこのホテルに泊まってるのかな〜」などとバンドの追っかけのような発言をしながら広大なネットの海で情報を漁ったりしていたわけです。

 そしたら、FCバルセロナロナウジーニョが在籍しているクラブです)のサイトに、ソシオ会員向けの公開練習が12日の夜にあると告知されていることを友達が教えてくれました。FCバルセロナにはオーナー企業が存在せず、ソシオと呼ばれるクラブ会員によって運営されていて、年会費を払えば誰でも、日本にいてもソシオになれるわけです。ソシオになるとソシオ特製ピンバッチ(銅)がもらえるらしいのですが、ソシオ歴が25年を超えると銀の、50年を超えると金の、75年を超えると輝く金色のピンバッチが贈呈されるそうです(ここに書いてあった→http://www.fcbarcelona.jp/socio/index.html)。50年のバッチは輝いてないんかいって話ですが、このソシオに12日正午までに入会申し込みをすれば、12日の公開練習は見れるとのことでした。このサイトをさっさと見てれば別にこんなのどうってことなかったんでしょうけど、私見たの11日の夜ですよ。「マジで明日見れんのか!?」と浮き足立ちましたね〜。広大なネットの海をさまよわなくても思いっきり公式ページに書いてあったよ!

 そんなわけで等々力競技場に行ってきたのですが、まぁ、行ってきたんかいという感じですよね……。ロクにサッカーのこと知らないのに。多分少し前の世代に生まれてたら、姉ちゃんジュリーのライブで気絶してたと思います。いやー、しかし遠くて顔は見えなくても、ちょっとふてぶてしい身体をしてるから遠くてもわかるね! ロナウジーニョはパスの練習中、ふざけてみんなと拳をくっつけあったりしていて、とてもキュートだった。ヒールパスとか本当にやっていて、しびれたよ。疲れているみたいで途中で抜けてしまったんですけど、ワールドカップとかで見た選手が山のようにいるので寒空の下最後まで見てしまいました。帰り、ロナウジーニョは一人だけバスの窓を開けて手を振っていました。つかれた顔をしていたけど、やっぱり歯が出てて、かわいかった。すごいや、ロナウジーニョって本当にいたんだね! 我思う、ゆえに我あり!(コギト・エルゴ・スム!)とかみたいに私が「いる」って思い込んでるだけじゃなくって本当にいたんだね……。あと、ライカールトってものすごくいい男だね(あれ?)。

 生まれて初めて観たサッカーの練習(部活とかでは観たことあるけどさ……)がバルセロナって、どうなんでしょうね。赤ん坊が初めて食べる食事が大トロとか、離乳食がウニとか、そんな感じですよ。まぁでも、一度もサッカー観たことなくてもワールドカップは面白いとわかるように、私でもバルセロナはすごいというのはわかるんだよ! 赤ん坊がウニをうまいと感じる程度だと思うけど……(うまいと感じるんだろうか)。ボールのやりとりがすごすぎて何が起こってんのかよくわからない部分がありました。

 スタジアムの入り口で待っていて、遠くにバルセロナのバスが見えてきた瞬間は夢のようでした。バスが入ってくると、隣りで携帯カメラを構えていた男の子が「写真なんかいんだよ! 今マジで目の前にいんだぜ? すっげ、すっげーよ!」と叫んで飛び上がっていました。そーそー写真なんかいんだよマジで! 降りてくるぜほらライカールトが! グジョンセンが! ザンブロッタが! デコが! そして最後にロナウジーニョがリズムを取りながら!

 ワールドカップを見るまでスポーツ観戦とかする人のことを30年間バカにし続け、サッカーの試合が何分なのかも知らず、リーガ・エスパニョーラとかセレソンなんて発音したこともなかった人間がいきなりバルサだのソシオだの言い出して等々力競技場まで行ってしまうんだから人生わからないですね。人が変わるには半年も、一ヶ月もいらない。変わるときはたった一日で変わる。

 サッカーの、しかもロナウジーニョが好きだなんて、ミーハーにもほどがあるし、私は何かを好きになることに関しては本当に節操がない。何かひとつをずっと追いつづける人のことを私は尊敬するけれど、自分はたぶん、そうなれないかもしれない。そのときどきで好きだなと思ったものが、結果的に長い間おなじものだった、という好きになりかたでしか、長いスパンで何かを好きになることはできないかもしれない。昔のよさを懐かしむだけになったときに、その何かは私の中で死んでしまう。

 自分の中の、古くなった部分がきらいだ。私は、十年つかえる手帳を買えない。欲しいと思ったこともない。たった5年前の写真すら持ってない。本当は固い皮がこなれてなじんでくるように、何かを大切にしながらていねいに年月を生きてみたいけど、ギャルのヴィトンが「使い込まれて」色合いが変わるんじゃなくただひたすらおんぼろになっていくように、私の中のなにかはただひたすらおんぼろになって切り捨てられてゆく。おんぼろのヴィトンより、数千円の新しいバッグを選ぶ。ずっと好きなものはほんのわずかだけど、今は、ロナウジーニョが好きだ。ロナウジーニョの姿を見るだけで嫌なこと全部忘れられる。あがる。あがる。どうしようもなくあがる。もし今すべてを失ったとしても、ロナウジーニョがサッカーをやっているのを見ているその瞬間だけはたぶん幸せな気持ちになれるだろう。すべてを失ったことはないけれど、なにかを失ったとき、そういうことがたくさんあった。昔はそれはロナウジーニョではなかったけれど、音楽や、映画や、AVや、そういうものを見ているときに絶望が何か別のものに変わっていく瞬間があった。そうして初めて、生きていくのに直接的には何の役にも立たないものが、この世の中にこんなに大量に存在していることの意味がわかったような気がする。おんぼろな私の心にも、きれいな水を流し込むことはできるのだ。

 私の来年の手帳はオレンジ色のクオ・バディス。大学生のとき以来のクオ・バディス。買ったすぐその後にパトリツィア・ぺぺでかわいい手帳を見つけてそれに買い替えようかと思ったけど、いちおう我慢した。本当は何ひとつ、がまんなんてしたくない。財布がぼろくなってきていやだから新しい財布がまだ見つかってないけど明日から財布をもつのはやめにする。明日(14日)は試合。どうかロナウジーニョの笑顔が見れますよう。いい試合になりますよう。そしてチケットがあまっている人がいたら私にくれますように。ロナウジーニョ大好きだよ。しゃべったこともないけどあんたがいい奴だってみんな知ってるよ。たとえ試合でブーイングされても、みんなあんたを愛してるからね。大好きなサッカーをやっておいで。いやになったら今すぐやめたっていい。やめて家族と暖かい海辺の町で仲良く暮らしたらいいよ。それでもあなたが好きだよ。もしも引退して、長い月日が経ったら、いつか砂浜でりんごのお酒でも飲みながら得意のエスパルジーニョを見せてほしい。私を楽しい気持ちにさせてくれたこと、とても感謝してる。あなたは私のヒーローで、アイドルで、大事な大事な息子のようなものです。おそれ多いけど。


※ちなみにFCバルセロナは横浜のホテルに滞在中なんですね。最寄りのビデオメーカー実録出版でしょうか。いいなー。実録出版のみなさん、通勤中にサッカー選手を目撃したらあの大迫力のカメラさばきで筋尻顔騎ショットを撮ってきてください。華麗に蹴り飛ばされそうですけどね……。