おおきく振りかぶって

★はい、明日から6月ですね。6月22日(金)恵比寿MILKで開催されるオールナイトイベントに出演いたします。

詳細↓
http://www.milk-tokyo.com/schedule/schedule_200706.html#22


 えっとですね、私、主催の方から出演者の方まで、誰一人として知り合いがいないので今ひとつどんなイベントなのかよくわかっていないのですが、テレビ番組形式で一人一時間ぐらいずつ何かしゃべるという感じらしいです。出演時間など、決まり次第またお知らせいたします。


 普段「友達のイベントで回します〜」などと書いている、ターンテーブルにすらまともに触ったことすらない素人CDJ(レコードの匂いすら嗅いだことのない)たちのブログ態度を最低最悪にバカにしきっている姉ちゃんですが(今友達が一気に10人ぐらい減る音がしましたね! 失うことなど怖くないさ!)もちろん、出るからにはですね、ある種のDVDを「回す」つもりでおります。たぶん使い慣れてない機材を使うことになるので、素人CDJ以下の見苦しいオタオタぶりをお見せすることになるかもしれませんが……。ええ、そのときは「ケッ!」と思い切りバカにし返してやってください。


 そして普段、田舎者なので「クラブ」という場所にちょっと敷居の高さを感じてしまう姉ちゃんですが、そんな私も行くので皆さん怖がらずに来てくださると嬉しいです。


★え〜、そして現在絶賛減量中の姉ちゃんですが(目標あとマイナス3キロ……。に、2キロでもいいから減ってくれ!)前にも書いたことあるジャン・ポール・エヴァンの、パリ本店でしか売っていないチーズ入りのチョコレート。をですね、なんとフランスに行った人からいただいてしまってですね、これはもう、食べないわけにはいかないというか、甘いものは蒟蒻畑(Light)のみの生活をしていた舌にいきなりこれはどうかとも思うのですが、食べてしまいました。


 私はエヴァンのこのチーズ入りのチョコレートは、食べる行為そのものがセックスと同じ(音楽そのものがセックスと同じ。という音楽もありますね)。というくらい官能的な味だと思っていて、老後男の人に相手にされなくなって性欲をもてあましたら、これを食べて一人でうっとりとからだの芯までとろとろに蕩けて過ごそう。と決めているくらいなのですが、なぜ! 日本で売ってないのか! 頼む! とカタコトっぽいもの言いになるほど日本での発売を切にのぞみます。頼むよ、私の老後までには……。あと私の友人・知人のみなさん、ご旅行の予定がありましたらぜひパリへ……(自分で行けよ)。


 というわけで、減量はまったく成功していません! 今読み返したら前回のエントリで「もうチョコは食べない」とか書いてますね……。言ってることが言ってるそばからウソになってゆく。そんな奇病にかかった狼熟女(30歳)です。いっそ言わないほうがうまくいくんじゃないか。もしかして思ってることと反対のことを書いたほうが成功するんじゃないか。そんな気持ちまで芽生えてきました。


★知人に「80年代ベストヒッツ」みたいなCDをもらって、30年間生きてきて今初めて自分がデッド・オア・アライヴが好きなことに気がつきました。しかし、この歌の気持ち悪いことよ!

歌詞↓
http://music.yahoo.co.jp/shop/p/53/110356/Y025337


「キミの名前を知ったよ」「キミの電話番号をそらで書けるよ」「キミとはとってもたくさん楽しめそうだ」「さぁ、そのカワイイ腕を開いて……」みたいな感じ? (英語はよくわからないので間違ってたらすみません) ほとんど俺が吉田アミに言ってるようなことと同じじゃん! きしょっ! きしょいけどそこにたまらなくシンパシー! 何時代か遅れていまさらシンパシーですよデッド・オア・アライヴの皆さん!(読んでないと思うけど)


★そして、今「おおきく振りかぶって」(ひぐちアサ)を4巻まで読んでいるのですが、号泣ですよ。アニメも見てるけど三橋の声のオドオドぶりがハマッていて、あと空が抜群に青いのが良くて、好きです。


 ひぐちアサのマンガを読んだのは、姉ちゃんの薔薇の花嫁(※参照「少女革命ウテナ」)である吉田アミつんにすすめられてすぐさま「ヤサシイワタシ。」を買ったのが最初なのですが、これがもう、どうしようもなくキツいマンガで、読んでいて「もう一人の自分を見ているとしか思えない」感覚に陥るほど、サブカル女(今なら『文化系女子』と言ったほうが通りがいいのかもしれませんが、それよりはもう少し俗っぽく、きちんと勉強や研究はしていなくて、うすっぺらで、野蛮な感じの若い女。のことです)の自意識過剰さや、根拠のない自身やプライドとその行方について、これでもかというほどぎりぎりの部分まで突っ込んで描かれていて、本気でこれは「ワタシ」の話だな、という感じがしました。


 「ヤサシイワタシ。」は、痛いマンガです。ある種の人間には深く深く突き刺さるようなマンガです。凄いか凄くないかと言えば、凄いとは思う。ただ、ある壁を一点突破できるかといえば、「できない」マンガだと思う。


 それが、同じ人が「おおきく振りかぶって」という、高校生の青春野球マンガを描いて、それが売れていて、アニメ化までされる。と知ったときは驚きました。そして、読み始めてみてさらに驚いた。ひぐちアサは、サブカル女マンガから野球マンガと描くものを180度変えても、本質としては「変わってなかった」んです。ただ、そのアウトプットの仕方だけが、非常にうまく「変わって」いた。


 私は、最初はこれは編集者の力なのだと思ってました。誰かが、ひぐちアサの才能に目をつけて、こういうド直球の「野球マンガ」なんていうものを描くようにすすめたのだろう、と思っていた。ところが読んでたら3巻に「『おお振り』の誕生するまで」という裏話が書いてあって、編集主導どころか本人が高校野球にハマって描きたくて描きたくて描いただけで、編集者は野球をほとんどまったく(「ホントに日本の男性なのか?」と思うほど)知らない人だとあり、うわー! と思った。すごい。ひぐちアサはすごい。最高だよ!


 ひぐちアサが「ヤサシイワタシ。」で描いていたのは、ひたすら人間の「陰」に属する部分です。そこに少しだけ陽が差す程度に希望が見えるぐらいで、とにかく負の要素をたくさん描くことで「希望」を見せているという形なのですが、「おおきく振りかぶって」では、その陰と陽が完全に逆転しています。


 「おお振り」の主人公の三橋は、もうすっごい陰。な性格なんですよ。オドオドしてて、自分に自信がなくて。でも、そのオドオドも自信のなさも、それを「克服していく喜び」の前には、ものすごく小さな陰でしかない。「おお振り」にあるのは圧倒的な希望と、ふりそそぐような「陽」で、私はそこにものすごく泣ける。アニメの「おお振り」のCMで、三橋の「ここでも野球ができる」というセリフが流れるだけで、もうだめだ。じわっと来る。いろんなキャラクターの、それぞれがそれぞれに抱えた理由や事情の中で持っている「野球がしたい」「勝ちたい」という気持ちに、グッと来る。のです。これはほとんど高校野球を観ていて泣いてしまう感覚(私はその経験がない。というか野球自体ほとんど観たことがないんですけど)に近いのではないでしょうか。これは、「ある壁」を確実に「一点突破できる」マンガなんです。


 私は、書く仕事をしていて、もちろん「書きたい」とは、思います。思ってるから書いてる。けど書くだけなら一人でもできるし、別に仕事にしなくたってできる。このはてなダイアリーなんて別に普通にどっかに勤めて、休みの日に書いたっていいわけだし。でも、やっぱり「誰かと一緒に」やりたい気持ちがあるんですよ。私が「おお振り」を読んで、共感するのは主にピッチャーです。私は、キャッチャーが欲しいし、信頼できるキャッチャーに対してものを投げたい。その人の求める球を正確に投げて、「よくやった」と言われたい。そういう気持ちは、たくさんの失敗が今まであるから、ものすごく強いです。素晴らしいキャッチャーだったのに、信頼できなかったこととか、何を投げても受け止めてくれる人だったのに思い切って投げられなかったこと、滅多にないチャンスだったのに力が足りなくて負けたこと、場所をもらったのに技術がなくてできなかったこと、どういう形がベストかイメージできていたのに、その通りにうまく投げられなかったこと。そのせいで誰かを巻き添えにする形で「負けた」こと。でも、私はまだここで「野球ができる」のです。まだ、仕事ができる。30にもなってなんですが、私は「仕事したい」し、「勝ちたい」ですよ。そりゃ泣くほどに。なかなかうまくできない。思ったとおりになんてできない。昔は「30になったら女として終わり」と思っていたその30歳が、仕事をする人間としてはまだまだ半人前程度のものだなんて思ってなかった。私は、「おお振り」の三橋と、おんなじようなものです。


 暗いマンガを描いていた人が、あるとき突然、人が変わったように明るいマンガを描き始めるという、そのことにも、勝手に深い喜びを感じます。安達哲が「バカ姉弟」を描き始めたとき、いろんな人が「安達哲は逃げた」という言い方をしていた。私は「バカ姉弟」以外の安達哲のマンガをほとんど読んでなかったので、そうなのかな〜と思っていたけど、「お天気お姉さん」を読んでも、「さくらの唄」を読んでも、「バカ姉弟」が「逃げ」だとは、まったく思わなかった。むしろ逆で、言ってることはずっと同じで、本質もずっと同じで「人間は、やりたいことをやる以外に、幸せになる方法なんてないんだ」ということをずーっと、ずーっと言ってるだけだと思った。そして、そのことをどう描くか、というアウトプットが変わっただけ(その「だけ」がとても難しくて、たいへんなことだと思うけれど)だと思いました。「やりたいことをやらなきゃ不幸になるんだ」という「不幸」を描くのか、「やりたいことをやれば幸せになれる」という「幸せ」を描くのか。その二つの行為が指し示すところは同じでも、その二つの表現はまったく違う。「バカ姉弟」は、ぐるっと回ってふりだしの、原点のゼロのところに戻ったようなマンガで、ものすごいマンガだと思う。私は安達哲の作品の中では、エロがなくたって「バカ姉弟」が好きです。いや、エロい方の作品も好きだけど……。しっかり使わせていただきましたけど……(何にだ)。


 さぁ、「おお振り」続き読むぞ〜! 読んでる人、先を私に言わないでくださいね。アニメは東京では木曜(今日)夜中1時半から放送です! ふつうに