三十路女の日常

宇川直宏のVJを観たくて連休に友達を誘ったのですが「最近、宇川直宏好きなんだ〜」と言ったところ「雨宮さんもやるからですか?」と聞かれました。「何を?」とおそるおそる聞き返すと「AVJです」との答えが……。殺す気か!


★衣替えをして半袖やノースリーブの服を出してみたのだがここのところクラッシュポッキー(ラングドシャ)がうますぎて体重が増加して視線を90度下に向けるのが苦痛なほどで、ということは視線を左右どちらに90度旋回してもやっぱりちょっと二の腕方面もアレなわけで、彼氏とかに「いやオレ今のほうが好き」とかってぷにぷにつままれて真っ赤になりながら「もーやめてよ!」と廊下を追い回すとかいう10代、そして20代と連続20年に渡ってやり残してきた楽しげなラブ・ゲームの妄想に想いを馳せる五月ですが、いかがお過ごしでしょうか。まぁこうして毎度毎度「三十路なのに」的な卑屈な自意識をほんとはそんなこと大して思ってもないくせに自動筆記で垂れ流してきたわけですが、このたびマドンナの新作『HARD CANDY』のジャケの写真(http://wmg.jp/madonna/)を見て「もう二度と三十路なのにとか言いません!」とタワーレコード新宿店の床に土下座して激しく泣きじゃくりながらマドンナ様の実物大ポップのつまさきをペロペロ舐めること一時間(「元気出してください」とタオルを貸してくれた店員さん、ありがとうございました)。いや〜、日頃よく「30過ぎのクセしてよくそんな短いスカート履くよね〜!」と友人に歪んだ愛情表現の言葉を投げつけられる私ですが、50でボンデージ大股びらき&舌なめずり&エロ丸出しサウンドでがんばっている同志(同志!?)の姿を見たからにはもうスカートの丈程度のささいなことでビビって安易にレギンスとかに逃げるのはやめようと思います。マドンナはセレブで自分は庶民とか、マドンナはトレーニングとマクロビオティックで厳しい肉体管理をしているのに自分は奔放で乱れた食生活を送っているとか(とんかつ大好き。あー思い出したらもうダメ……今夜絶対食べちゃうよ!)、そういうことはサッパリ忘れて「露出好き」という一点のみで「同志」と認識する頭の悪さが先の見えない人生を楽しくする秘訣のような気がします。


 最近結婚した友人にハッピーオーラを恵んでもらうべく会いに行ったところ、友人の旦那様が30歳以上の女の恋愛やセックスの話に異常な嫌悪感を示す、という話になりました。たとえば30歳以上の女がレストランとかでジャニーズの誰々がカッコいいとか話してるのを聞くだけで不愉快! という感じらしく、年上女と年下男の恋愛を奨励するようなドラマなども一切受け付けないのだとか。「30以上の女なんかとつきあえるわけない」と明言しているそうで(もちろん結婚相手の彼女は除く)、友達は「自分も30過ぎてるくせに、なんでそんなこと言うのかわかんない」と憤慨していましたが、たっぷりいますよねこういう人。熟女フォビアというか、フケた女が発情したり欲情したりしている姿が醜悪で見るに耐えないという人。「恋愛は美男美女だけがするもの」「セックスは若い人だけがするもの」という思い込みに近いものがあるかもしれません。


 私は投稿雑誌の取材で、投稿写真を撮っている人にインタビューさせてもらったことがあるんですが(投稿誌のインタビューは本当に面白いです)、年下好きにもレベルがあって、若く見えればいいとか自分より年下ならいいとかはまだ融通きくほうで、たまに本当に18歳から20歳までの女しか受け付けないという人がいるんですね。「その年齢限定っていうのは、どのあたりがポイントなんですか?」と聞くと、ゴミ虫を見るような目つきで私を一瞥してから「肌のハリですよ」と答えられたりします。べつに女扱いしてくれなくていいので人間として話をさせてくれませんかと心で思いますが、生理的に不快なのだろうから仕方ないんですよね。見た目的にシワなどでフケてきてそれが気持ち悪いというのもあるのだろうし、30過ぎると肌というか肉がぽよぽよっとしてくるので、触った瞬間パツーン! ではなく ぽよぽよっと指が沈む感じがすると「キモッ!」と思うのだろうし、それはもう「そうですか。30過ぎたゴミ虫にインタビューされるのはさぞやご不快でしょうが、しないと誌面に穴があいてしまいますので、もう少し辛抱してやってくださいね」と祈るような気持ちで取材を続けるしかないわけですが、18から20歳までの女とファックする理由が「若い女を抱ける優越感」や「社会的に価値の高い若い女を抱く征服感」とかでなく、生理的に若い女しか受け付けないという好みの問題の場合は「しょうがない」という感想以外に持ちようがないです。日本の男はみんなロリコンとかいうなげきを書きたいわけではありません。三十路の自分を振り向いてくれないからといって、ロリコン(犯罪未満)を憎む気持ちは自分にはあんまないです。自分が女を見る目線にロリコン趣味がないから(マンガやAVやエロ本の架空のロリータポルノに欲情することはあるんですけど、基本的には)、幼女うらやましいとか幼女になりたいとかあんま思わない。でも、思っている女性も多いでしょうね。死ぬほど苦しいでしょう。『飛ぶ夢をしばらく見ない』でも読んで、妄想でお茶をにごしてください。


 「30過ぎたらババアと呼ばれる」という日本の伝統について異議ありとする友人もいますが、そういう女性のみなさんはサブカル業界入りすれば30過ぎても余裕で文化系女子とか呼ばれるそうですから、そちらの方面でがんばってみてはいかがでしょうか。文化系女子が死ぬほど大好物という男性もいるようですし。こういうサブカルを小馬鹿にしたような発言がもっともサブカルっぽい態度だということは重々承知しているのにやめられない私はサブカルが骨の随までシミついているんですかね。ちなみに私は女子という呼び名が死ぬほど嫌いなので女子とか呼ばれるくらいなら気軽にババアと呼んでもらったほうが全然マシです。女子っていう言葉のセックスへの距離の遠さみたいなものが嫌いですね。文化系女子と呼ばれているみなさんには何の嫌悪もありませんし吉田アミつんとかむしろ大好きですけど。吉田アミつんは俺にエロいマンガをよく貸してくれるのですが、エロにしか興味を持てない人だと認識されているのか、それとも誘われているのかどっちなのか考えているけどわからないのでアンケートをとりたいと思います。ツンデレだと判断して強引に迫るが吉でしょうか。


 加齢による容貌の衰えに対する不安には、何も答えようがありませんが、加齢によって恋愛・セックスがみにくいものに変わるという不安をお持ちのみなさんには、田辺聖子をおすすめしておきます。生理がアガって妊娠の心配なく安心して逢瀬を楽しむ不倫小説などもあるし、なにより美男美女や若い男女ではない恋愛がいっぱい描かれていて、キレイなだけの恋愛やセックスなんてファックオフなリアルを垣間見ることができます。でももうちょっとスタイリッシュなのがいいの、という都会派のアナタには森瑶子安井かずみを。私の心に輝く憧れの星は、実は森瑶子です。「わだば森瑶子になる!」といつも思ってます。わだば森瑶子になって機内誌とかファッション誌とかに若い女をたしなめるコラムとかを書くんじゃい! 安井かずみの方がステキと思ってるけど安井かずみは女純度が高くてムリそうなので、ちょっとだけ男らしさ成分が入っている森瑶子のほうに憧れてみました。がんばります。