死なないための読書

★はい、復活しました。その間何をしてたかというと、突然Macでひらがなが漢字に変換されなくなるというトラブル(幼児退行……?)が起きたり、まぁなんかいろいろあったんですが、とりあえずお知らせを。


★現在発売中の『DMM DVD』のイイトコドリのコーナーに今度こそ『N県S郡に週末限定のヌード村があった!?』(アイエナジー)のレビューを書いてます。イイトコドリのレビューは、かなり文字数多く、他の執筆陣の方々も豪華なのでぜひ!


★そしてとっくに発売中の『エクス・ポ5』ですが、封筒に入ってるのでわからないであろうことを説明すると、今回のアミまみ相談室は文字数が通常の二倍ぐらいになっており、さらに佐々木敦さんも一緒になって将来ある若者の相談をメッタ斬る内容となっております。そして相談者のI君が、これはAV関係者にしかわかってもらえないたとえで申し訳ないんですけど、プチ中村敦彦さんのようなネガティブシンキングで笑えます。どんな希望的観測を提示しても即座に「でもサブカルの人ってみんな不幸じゃないですか」と、サブカル界の面々を前に言い放ってみたり、「僕、普通に幸せになりたいんですよ。家庭も欲しいし」(吉田アミ=独身、雨宮まみ=独身、佐々木敦=独身(たぶん。聞いたことないけど……)、藤原ちから=えっと、結婚ってしてましたっけ?)の前で言い放ってみたり(ワシらは普通に幸せじゃないんかい)、ホントヒドすぎて笑えた! しかも本人まったく悪意ナシ! これが若さというものか……。


★最近面白かった本『17歳のための世界と日本の見方 セイゴオ先生の人間文化講義』(松岡正剛)。


 えーっと、「伊勢神宮に行った」とか書いてたあたりから「こいつ何かヤバいんじゃないの? スピ方面にどっぷりイッちゃってんじゃねえの?」という疑いをお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思いますが、そういうことの最初のきっかけが何かというと、吉本隆明なんですね。吉本隆明の講演があまりにもすごすぎた。吉本さんは、最初に終戦のことを語ったんです。


 終戦によって、それまで信じていたものが全部崩れてしまって、それで自分は世界のことを知る勉強を始めた。世界を把握することができなければ、生きていける感じがしなかった。それまで戦争に貢献してきて、自分が戦争をやめようと言ったわけでもないのに突然それが終わってしまう。それで、自分は世界のことを知ろうと思ったのだと。そして、その体験と、今までの知識の中から「世界を把握する」やり方について話したい、と。


 それは「生きていく方法について、自分の体験から話したい」と言っているのと、ほとんど同じことだと思った。とにかく、今目の前でこの人は自分のすべてを傾けてしゃべっているのだ、ということはわかった。それは、観客を警戒していてはできないことだと思う。それからの話には、ものすごく重要な、もう忘れることができないような、思い出しただけで震えが来そうな言葉があったのですが、まず最初のこの「覚悟」みたいなものに、私はかなりやられてしまいました。


 今まで「どうせ難しくてわかんないだろう」と思ってたことが、すーっと入ってきて、しかもそれが何よりもわかりやすいシンプルな言葉だったので、私は一流の哲学っていうのは、たった一言でずばっと人の脳天からつま先までを貫くような言葉を持っているものなんじゃないかと思いました。そしたら、すごく面白いものなんじゃないかと思えてきた。それでなんとなく私の中で哲学の時間が始まって、とは言っても難しい本は読めないから、細野晴臣の本を読んでみたり、セイゴオ先生にまで手を出してみたりしているわけです。細野先生の『アンビエント・ドライヴァー』も面白かったです。スピリチュアルというか、精神世界や運命や占いの話になるとたいてい「俺そういうの信じないから」という、信じる/信じないの二者択一で話がぶった切られてしまうことが多いですが、精神世界の話は、信じるとか信じないとかではなくて「世の中にはこういう考え方があって、それを信じてこういう風に生きている人たちがいる」という話のように思います。自分とはまったく違う考えを信じていたり、自分の常識とまったく違うことを考えている人たちがいるのだと知ると、私はふっと身体から力が抜けるんですね。それを信じるか、信じないかじゃなくて「今自分のいる世界だけが全てじゃないんだ」と思える。いつでも、どこにでも逃げられるし、それができればどんなに追いつめられても死ななくて済むように思える。考え方を変えること、信じるものを変えることさえできれば、とりあえず自分から死ぬようなことはしなくて済むんじゃないかと思えるんです。ちょっとあまり整理できてない話で申し訳ないですが、死にたい人に勧める三冊として、私は吉本隆明と、『アンビエント・ドライヴァー』と、『17歳のための世界と日本の見方 セイゴオ先生の人間文化講義』を選びます。苦しいひとは、読んでみてください。

アンビエント・ドライヴァー THE AMBIENT DRIVER (マーブルブックス)

アンビエント・ドライヴァー THE AMBIENT DRIVER (マーブルブックス)

17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義

17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義