2008回目の初恋

★唐突に、桑田佳祐のことが好きになってしまいました。今までだってそりゃ街やテレビで流れる歌を聴いたことぐらいあったし、エロくて派手でよく考えたら好きにならない理由がまったく見当たらないんだけど、なんかちょっと手強い感じで(私が子供の頃には、すでにスターだったからね)今まで深入りしたことなかった。深入りしたら好きになるのがわかってたからイヤだったのかもしれないけど、『FNS歌謡祭』で不意に『SKIPPED BEAT』が流れて、しびれて、その晩はYouTubeで桑田とサザンの曲を聴きまくり、amazonでCDや本を買って、今まで聴いたことのなかった桑田とサザンの曲を聴いて、好きになってしまって、桑田が無責任にエロい歌詞を歌えば歌うほど、そこが好きなのに悲しくて吐き気がしてきてどうやら本気で一線を越えて好きになってしまったんだ、とやっと気づいた。「胸をつかみうなじを味わいやせた腰をからめて とぎれとぎれの声聞くだけでいい 恋をすればするだけ女の泣いた顔に褪めてく 髪の長さや色気じゃ酔えない」って、その気持ち、よく知っている。何度も目の前で見てきたことだ。私は、たぶん、自分を女として認めることができるようになるまでだいぶ長い時間がかかったから、自分の女としてのふるまいにいまだに自信がないし、でも男は好きで好きで好きでもうものすごい集中力で観察しているから、男の浮気な気持ちや欲情が手にとるようにわかる気がするときがある。自分は半分ぐらい男なんじゃないかと思うくらい「胸をつかみうなじを味わいやせた腰をからめて とぎれとぎれの声聞くだけでいい 恋をすればするだけ女の泣いた顔に褪めてく 髪の長さや色気じゃ酔えない」っていうのが、本当だってわかるんだよ。わかるけど多分自分は男の前で泣くし、今までそうして何人もの人に去られている。


 自分が男だったら、女が見た目だけだったらどんなにいいかと思うだろう。ただ見た目で欲情させてくれて、やらせてくれて、終わってもガタガタ言わなくて。AVで観るぶんには、そういう女が好きだ。同性として好きだという女優と、そういう気持ちで好きな女優は、違う。「自分が男だったら好きな女優」には、心が穏やかでいられなくて、そういう女を観ると憧れで胸がしめつけられる。


 でも多分、桑田佳祐も女が好きすぎて、女の気持ちが半分わかるようになってんじゃないかと思う。女の欲情の仕組みとか、よーく知ってんだと思う。女の浮気に痛い目見たこともあるんじゃないかと思う。あと、ヤッたけど女があんま満足してなかったとか……。でも「その気持ちわかっちゃう」んじゃないかな。男臭いようだけど、もの凄くフェミニンに感じるし、男の欲情を歌うだけだったらここまでエロくはならないと思う。男と、女の、恋愛や欲情の入り混じるスケベでずるいあの感情をどっちもよく知り抜いてるから、ずば抜けてエロい歌詞が書けて、しかも苦労して書いたって感じじゃなくてもうすれ違う女を見つめるだけで3秒ぐらいでたやすく潮吹かせるような自由自在さでやってのけられてしまう、のかな? 天才の一言で片付けたくなるのはやまやまだけど、今も生きてる人間なんだから、なぜあんなに魅力的なのかその秘密が知りたくていろいろ、えんえん、考えてしまう。


 ちなみにwikipediaによると桑田さんは夏目ナナさんや及川奈央さんがお好みなようで、めっちゃいい女好きなのはわかったから、もう自分を自分で土に埋めたい気持ちです……。人生やり直したいと思ったことなんて一度もないけど、それを読んでちょっとやり直したくなったよ。14歳ぐらいで女として生きる覚悟をしっかり決めてれば、もうちょっと何とか……。一回ぐらい何とか……(何がだ)。そしてその頃からサザンを聴いてればライブとか行けたはずだよね……。


 というわけで、「今さらサザン!?」「なぜこのタイミング?」な感じですが、何を隠そう私は今年初めてビートルズの「サージェントペパーズ」のアルバムを聴いたし(そして初めてビートルズに好意をもったよ)、ビーチボーイズの「ペットサウンズ」も聴いたし(とてもよかったが手の届かない感じ)もう「今さら」なんて怖くない! この先また「なんで今ごろ……。世間はその価値とっくに認めすぎなくらい認めてるっつーの!」というものを好きになって絶賛していたら「またか……。サブカルに青春費やしてメインストリームを見逃してきた可哀想なヤツが今さら青春を取り戻しているな……」とあわれみの眼差しをモニター越しに送ってください。三十路になって初めて青春時代に夢中になるべきだったものに出会うのは、出会わないよりはるかにマシだけど、一人だけ時空から取り残されたような孤独感がたんまりつきまといます。サザン好きな人はたくさんいるんだろうけど、「今好きになった!」という激しい感情はをわかちあえる相手は、なかなかいないですからね。