★ほんとにちかごろ不景気〜と歌っていた頃にはそれ以上の不景気があるとは思ってなかったな〜。やさしくて可愛くてお金持ちの男の子……限りなくゼロに近いブルーですよ! もうほかはいい! 可愛いだけで……。


★去年、はじめて一人で海外旅行に二回行った。海外旅行にはそれまでも何度か行ったことがあったけど、いずれも友達と一緒だったり、かならず誰かと一緒だった。一人で行くのはかなり不安だったけど、実際行ってみると、そんなにどうってことはなかった。


 一人で行ってはじめてわかることがある、と思ったことがひとつある。それは「自分の外見と向き合える」ということだ。


 そんなん向き合いたくない……とコンプレックスを山ほどかかえた人は思うかもしれない。けど、それ、意外といいことなんですよ、と劣等感にふるえ泣く青春時代を送り、今では足元までヒタヒタとしのびよる老化の波におびえている私が言ってみます。


 どういうことなのかというと、海外に行くと当然まわりは外国人(私から見れば)ばっかなわけです。はっきり、もう体型から顔つきから全然違う人たちがいっぱいいる。ヨーロッパでもアメリカでもアジアでも、はっとするような美しい人、魅力的な人がいる。


 そういう人たちの中で、自分はどうかというと「日本人」だから、くっきり浮いてるというか「違う」んだっていうことがもう、びりびりと肌で感じるくらいにわかる。


 外国で見る魅力的な人というのは、その国の人なりの特徴をうまく魅力的に見せている人が多い。もってうまれた身体や顔を最大の魅力として、存分に活かしている(ように、私には見えた)。そしてそういう人たちの中で自分を見ると、自分は「日本人」の顔と身体っていう、活かしようのある「魅力」をもっている、と気づかざるを得ないんです。


 もちろん外国だから、そこでは日本のファッションの流行や常識なんて関係ない。「日本」にいるあいだ、普段無意識のうちに「日本で着てウケるファッション」や、「日本でホメられるおしゃれ」をしようとしていた気持ちが、そこではきれいさっぱりなくなる。そこにいる間は、日本ではやっててステキ〜って言われるようなファッションは、まったく関係ないからだ。


 外国で、なんかの拍子に自分の姿が鏡に映るとどきっとする。肌の色や身体のサイズが周りの人と全然違う。でも、そのことは全然いやじゃなくて、むしろ良いことのように思えてくる。どんなに素敵な人がいても「あの人はあの人、私は私」でしかないことを、徹底的に自覚させられる。理屈ではわかってても普段はなかなか自覚できないし「私は私、でも……」って思っちゃうこれを、もう「私は私!」って言い切るように自覚せざるを得なくなる。


 自分はどうしたら魅力的で、素敵な人になれるのか、ということを、ふだん日本にいるときはファッション誌を見たり服を買ったりして表面のアレンジをどうするかってことで考えてるけど、外国では「日本人である自分の特徴、もってうまれたパーツを最大限に魅力的に見せるにはどうすればいいのか」という、もっと根っこの部分から考え直すことになる。


 素敵な人は、べつに外国に行かなくてもそういう発想やセンスを身につけているのかもしれないけど、私のように「ファッション好きだけど、いまひとつパッとしない」「あかぬけない」「でも素敵になりたい」人間にとって、この体験はけっこう衝撃的だった。自分の体重とか、ダイエットしなきゃとか、リキッドアイライナーがうまく使えないとか、どのマスカラがいちばん伸びるかとか、そういった細かいことがいったん全部リセットされて「そこじゃない」「その前の段階から服やメイク、おしゃれといったことを考えなおしたほうがいい」と思った。日本ではいいと思って持ってきたものが、一瞬パッと色あせたり、そうでなかったりする。「その服が本当に自分を良く見せてくれるものなのかどうか」が、すごくはっきりするのだ。


 そして、それは、気が遠くなるほど自由なことだった。いままで手にとらなかったものを顔に合わせてみたり、いままで買わなかったようなものを買ってみたり、着てみたり。誰も自分のことなんて知らないし、誰の目も、きげんも、うかがわなくて良い。自分は本当はどんな服を着たいのか、自分は本当は、どういう「美しさ」を目指したいのか、そういう考えの基準みたいなものが、いったんリセットされてまっさらになった自分の中にうまれてくる。


 自分はひとりで、その国に自分のことを知ってる人なんてだれもいない、という状況になってはじめて、それまで自分がいかに自分のことを「こういうのが私は似合う/似合わない」と決めつけたり、「自分はこういう服を着るべきではない」と思い込んでいたり、服だけでなく「こういう行動は取らない」とか、行動パターンまでもがへんにかたくなになっていたのか、よくわかる。


 「自分探しの旅」っていうと、すごくばかみたいだし、「自分は探さなくてもそこにいるだろ!」とツッコみたくなる気持ちもわかるけど、日本の中で、日本人同士の中で、さらにその中の仕事関係や交友関係の小さなサークルの中でだけ、自分と他人を比較し合っているだけではなかなか気づかないようなことが、ぽつんと違う文化・違う人種の中に置かれたときに見えてきたりする。


 こんな海外旅行のおすすめの仕方ってなんとなく80年代とかそんな感じっぽいな〜。しかも不景気なのに海外って……と思うけど、不景気で旅行もセール価格になってて、ヘタな国内旅行より全然安いのもいっぱいあるから、やっぱりおすすめします。特に今のように日本が閉塞感に満ちているときは、すごく良い気分転換になるんじゃないかな。