中村うさぎさんがtwitterで、男の人がゴムをつけたがらない理由について考察されておりましたが、私の知るかぎりAV業界では、仕事でセックスする男性ほどゴムを嫌う傾向があるように思います。いや、そんなにいっぱいデータを取ったわけではないんですが、ハメ撮り監督って異常なほどにナマ好きが多い。理由は「ゴムつけてって言われると仕事っぽくて萎える」「仕事でもナマ挿入を許してくれる女は、感じちゃって仕事なんかどうでもよくなってる感じで燃える(または普段仕事ではゴムつけてるくせに自分だけにナマ挿入を許してくれてる感じが燃える)」「つけるとイキにくい」が、聞くかぎりでは多いかなぁ。でも、ハメ撮り監督じゃない監督も、男優さんでも、わりと多い気がする、ナマ派の人。「プロだからそのへんきちんとしてる」っていうのは、ウソだと感じます。ほんとにきちんとしてる男優さんや監督さんもいるからそこんとこは理解しといて欲しいけど、びっくりするほどきちんとしてない人もいます。


 「ゴムをつけなきゃいけない」っていうのは、女の側の常識(男の側にも病気のリスクは同等にあるわけで、全然女の側だけの常識じゃないんだけど、セックスを仕事にしてる業界で、検査は受けてても予防する気のない男の人はけっこう引くほど多い。何度か検査受けてシロだと「そんな簡単に病気とかなんないじゃん」「免疫が強いと病気かかんない」っていう、なんとなくの「大丈夫」な感覚が生まれがちみたいだ)であり、なおかつ「お仕事としてのAVの常識」であったりもする。大勢が見守る中での単体女優の撮影とかでは、ナマがウリの企画でもない限り「その場のノリでナマ挿入」とかはありえない。女優さんの所属事務所に怒られる(マイルドな表現)ので、そういうことはしないし、できない。


 そうやって「ナマ挿入」がタブーになればなるほど、それによる興奮度は増していくわけで、自分が生まれる前のことは知らないけど「コンドームをつけなきゃダメ」っていうことは常識になってきたことにより、タブーである「ナマ挿入」に燃えるようになっちゃったんじゃないのかな、と思わなくもない。


 声を大にして言いたいけど、最近ワクチンが受けられるようになって話題になった子宮頸癌の原因になるのはヒトパピローマウイルスで、クラミジアにかかるとこの菌に感染する確率が異常に高くなるそうだ。クラミジアっていう病気自体は性病の中では軽いほうで、特に男は抗生物質を一週間か二週間飲んだだけで治る。症状もほぼなく、気づかない人はまったく気づかない。妊娠の心配だけじゃなくて、性病の心配だけじゃなくて、妊娠できなくなる可能性や、がんにかかる可能性まであるわけだ、女は。正直、冗談じゃねーよと思う。ふざけんなと思う。


 でも、興奮することについては、わかるんだよね。興奮についてもわかるし、いちいちゴムのこととか気にせず、なんの心配もなく、いつでもどこでも獣のようにめちゃくちゃになれるんだったらどんなにいいかと思う。私が知らない人とセックスするのにためらいを感じるのは、その人が「ゴムをつけるのが常識な人」かどうかわからないからという理由もある。ほかのことですごく常識人でも、ここばっかりはわかんない。自衛するにはどうなのか聞くしかないんだけど、いやらしいことでお互い頭がいっぱいで盛り上がってるときにそんなこと聞くのは、じゃっかん萎える。「絶対つけてくんなきゃ嫌だ」っていう気持ちは確かにあるのに、自分の中の性欲はこまかいこと気にしたくない! と叫んでて、言いたくないのに言わなきゃいけない状況がほんと、いやになったりする。たぶん、こういう感じで「ゴムとか気にしたくない/女に『つけて』って言われると萎える/もしくはそこを押し切って強引にナマですることにすごい興奮を感じてしまう」という男の人もいるんだろう。危険だとわかっているのにナマですることに興奮を感じてしまう女の人も。


 ナマかゴムかどっちがいいか、みたいな話にすると、ゴムをつけるのがそりゃ正しい(生殖行為としてはまちがっとりますが)! なのに何を言ってるんだ! ということになるけど、それはたぶん定義がおかしくて、「ナマ好き」って一種の性癖だと考えると自分の中ではわかりやすくなる。マナーや常識だと思うと、なぜそれをこんなに意地でも守らないんだろう? と謎だけど、それに興奮する性癖だからしかたがないんだと思えばまぁ、理解できないこともない。いや、ごめんウソついた。よくわかるよ、ナマが好きとかっていうのは。わかるけどすごい怖いんだよ。


 私は我が身にふりかかるリスクを考えるとゴムなしで押し切ろうとする人はそれだけでものすごく嫌になる。たとえ気持ちよかったとしても、帰りには後悔で気持ちが真っ暗になる。本当に本当に怖い。そういう恐怖を味わいたくない気持ちに、あふれる性欲がおびやかされてる感がある。もっとしゃっきりはっきりした態度を取りたいものだけど、正直、絶対ゴムつけたくない人はしつこくつけろって言っただけでキレたりするのでほんと怖い。なんでセックスするのにこんな怖いハードルをいっぱいクリアしなきゃいけないんだと思うと泣けてくる。まじで。おかげでなんかやんなっちゃって禁欲生活……。もうナマ派っていうだけでその人のこと、いやになっちゃうよ。女の身体のこととかほんとどうでもいいんだなと思うし、ナマ好きな気持ち自体には共感できるけど、直接関わる相手としては受け入れたくない。どんなに気持ち良くても、こわいのはもうイヤだ。


 子宮頸癌の検査、三十過ぎたら年に一〜二回やったほうがいいんだけど、その度に東京に家族がおらず全国どこにも恋人のいない私は夜中泣いちゃうんだよね。入院とかなったらどうしようって。毎年受けてればそれなりに早期発見になるだろうから、そこまで子宮頸癌だけを心配しなくてもいいと思うんだけど、婦人科系の病気って自分の周りで出産未経験の三十前後の女がかかる率がハンパなく高いから、いつかかってもおかしくないというリアリティがほかの病気より高くて、こわい。ただでさえ下半身にそういう不安な爆弾があるのに、これ以上下半身のことで悩みたくない……。


 と、論旨がめちゃくちゃになって混乱してますが、もう出かけるのでここまで。では。