宮部みゆきの『楽園』を読んでいて、あまりに引き込まれて亡霊のようになっております。


 宮部みゆきは、人物の描き方が一見穏当で、桐野夏生のように女のエグさを前面に出すようなことはあまりしないんだけど、同じ濃度のエグさをそれとなく描いていて、それだけでなく「普通の人間」の持ちうる、善人の持ちうる「善」でない一面を描くのがとても上手い。


 しかもその物語がすさまじく面白く、ミステリーとしても上出来、さらに派手でなおかつワキが甘くない。どこを取っても圧倒的な筆力で押しつぶされそうです。柔軟で堅牢で、骨が太くて強い。精神力だけで書いてない感じがするし、全身の筋肉をくまなく使って運動しているようなのびやかさがある。


 最初の数ページを読んだらもう逃げられない。最後まで読まなきゃ止まらない。途中まで読んだら怖くて眠れないので一晩かけて読んでしまった。異世界に飛ばされてきたみたいで、呆然としてる。