讃岐うどんチェーンの丸亀製麺ってなんであんなにおいしいんだろう。はじめて「株買いたい」と思いましたよ。うどんだけじゃなく天ぷらまでさくさく。なにあの気合いの入り方。チェーンであんなにうまいってことは、本場の讃岐うどんっていったいどんだけおいしいんだろう。気絶しそうなくらいうまいに決まってるよなー。


★いまだにメンズサイゾーで書いた『銭』の原稿を読まれているみたいなのですが、ほかの原稿はべつにどうという反応もないのにこれだけアレなのは、多くの人がエロに求めているものって「えげつないリアリティ」や「業界ウラ話」なのだということなのだな、と思って、最高に萎える。


 エロのライターやってます、と自己紹介をするといきなり「AV女優ってギャラいくらぐらいなんですか〜?」(ピンキリなので一言で答えられない。事務所の取り分もあるので、支払われるギャラと女優さんが受け取るギャラは違うし。まぁピンとキリが知りたいんだよね、わかるけどそんな例外的な金額だけ言って知ったかぶりされて言いふらされて誤解を生みたくない)「ホントに女優騙したりとかするんですか?」(裁判になったような事件もあるけど、多くは真面目に作ってる。でも騙してるわけじゃなくても女優さんに撮影内容があんま伝わってないこととかもある。事務所の問題もある。のでやっぱひとことで言えない)「中出しとかってヤラセなんですよね?」(この世にピルがあることを知らんのか? 明らかにヤラセなのもあるけどホントのもある。精子の真贋を見分ける目はそっちのほうがあるでしょ)「つかAVなんて全部ヤラセですよね?」(ヤラセじゃないものを撮るために制作側がどんだけ苦労してると思ってるんだ。なぐっていいですか)とか、聞かれることがある。興味のポイントってそこなんだろうというのはわかる。


 そういう人に「仕事が好きでやってるAV女優もいる」とか「本気でエロい女優さんもいる」って話しても、信じてくれない。雪見紗弥ちゃんが「痴女の設定だと責めなきゃいけないのに、ちょっとでも責められると気持ちいいからついのっかっちゃって全然責められないんです……」とかまじで言ってんのにそんなのウソだとかリップサービスだとか言う。「エロいことが好きな女」って、この世に存在しないファンタジーだと思ってるのか? かわいくてエロい女とか、そりゃ夢のようだよ。でもだからっていないって決めつけるの? すっぱいぶどうの法則? そりゃ私だって誠実でかっこよくて浮気しなくてセックスうまい男がこの世に存在するとか信じたくない気持ちになるときありますけどね……。


 AVやエロの世界には、そりゃえげつないこともある。でもそればっかじゃないし、楽しいことや、一生懸命やってる人や、ほんとにAVが転職みたいに輝いてる人もいる。けどえげつなければえげつないほどそれが「本当のこと」みたいに見えて、楽しいことやいいことであればあるほど「ウソっぽいサービストーク」にしか見えない、らしい。


 びっくりするようなことや衝撃的なこと、それもマイナス方面にショッキングなことのほうがほんとっぽく見える。しょうがないよね、普通の人は、エロの世界で働くなんていうことがそもそも信じがたいことなんだから。それにやりがいを感じるとか、それを一生懸命やるとか、そんなこと信じられるわけがない。「金のために仕方なく」やってるとか「他に行く場所がない」とか、そういうことのほうがずっと信じやすいし受け入れやすいことなんだろう。


 金のために仕方なくとか、他に行く場所がないとか、そういう面も確かにある。私だってお金欲しくて仕事してる。誰だってそうだろう、多少は。でもじゃあ金のための労働は全部「いやいや仕方なく」なのか。大変だけどでも充実感あるとか、そういうのって全然ないのか。


 「お金もらえなくても楽しくて充実感あるからやってるんです」っていう言葉がウソっぽいのと同じように、ものごとを徹底的にマイナス方向から観るような言葉って、私はウソっぽくてすごく嫌だ。「金のために、なんにも楽しいことなんかないけど仕方なくやってます」って、それがただひとつの真実なわけがない。


 『銭』は、べつにそういう描き方をしてるマンガではないし、すごくフェアに描いてある。しかもちょっとエロいしいいんだけど、あのレビュー読んでる人がそこに求めてるのはそういう「作品としての面白さ」とかじゃなくて「エロ業界の、隠されているであろうえげつない真実」みたいなものなんだろうなと思うと、そりゃ知りたいだろうけど、げんなりするよ。『銭』だけ読まれても、エロ業界のほかにいくつも平行して存在するいくつもの、人それぞれの「隠された真実」は、全然伝わらない。


 いやなこともあるし楽しいこともある、もっといろんな複雑な感情があるっていう当たり前のことは、本当は誰も必要としてなくて、複雑さなんて無視して単純化して「いい」か「悪い」か、どっちかに決めてしまったほうが人を惹き付ける記事になるんだろう。週刊誌のコメント取材とかはだいたいこれで、とにかくはっきりした結論を求められる。「こういうこともあるけど、こういうこともある」なんていう言い方ではだめで、はっきりどちらとも言えないようなことでもはっきりさせられる(短いコメント取材の場合なので、長い取材の場合は違うかも)。意図はわかるんだ。そりゃ、びしっと方向決めて記事まとめなきゃまとまんないだろうし、そんな複雑さなんて知ったことじゃないだろうし、わかりやすく面白いコメント欲しいだけだし。それを出せない自分が悪い。でも言葉が切り捨てられるたびに、自分が大事な誰かの気持ちを切り捨ててしまっているようないやな気分になる。


 「エロとかどうでもいいんですけど、面白いAVないですか?」とか聞く奴死んでくれって思うよ。なんでエロの仕事してる人間が、エロに愛情ないって思うの? エロなんて愛情持つ対象じゃないから? くだらないものだから? 私のことも、仕事として仕方なくエロやってるだけで、ほんとは「普通の」ライターになりたい人間なんだろって思ってるの? 「エロとかどうでもいいAV」なんて、クズだよ。そんなゴミみたいなAV観たいんだったら勝手に拾っててくれよって思う。うそうそ、そんなにエロくなくてもなんとなく愛すべき感じのAVっていうのはあるよ。だけどそれは私にとっては「面白いAV」じゃない。頭だけで面白いと思うなんて、たいして良くないってことだ。


 多くの、エロにそんな大して興味もなく、切実な欲望を抱えてもいない人から見たら、興味あるのは「自分にとってエロくなくてもいいから面白いAV」なんだろう。エロなんてどうせ大したことなくて、AVにグッと来たこともないから、AVに本当にエロいことが映ってるかもしれないなんて想像もつかないんだろう。普通はAVなんて、つまんないから。普通はAVなんてどうせヤラセで、どうせ女優はみんな金のためだけに出演してて、どうせ監督なんてやる気なくて金のために仕方なく撮ってるだけで、どうせそういうしょうもない世界なんだろうって、思ってるんだ。しょうもない世界だから、土足でずかずか踏み込んでもいいって、無意識に思ってるんだろう。


 そりゃしょうもない世界だよ。だけどしょうもなくない世界なんてこの世のどこにあるんだよ。あなたのいる世界は、そんなに素晴らしいのか。他人をばかにできるほど、そんなにちゃんとしてて、素晴らしいのか。


 「普通」ってなんなんだよ。「普通」って言葉からちょっとばかり外れた場所に来てまで、ここでの「普通」を、複雑さをばっさり切り捨てて、単純化するような言葉で語られたくない。


 はっきりした結論なんて出せないことが、いっぱい矛盾してることが、大事なことだとなんで思えないんだろう。伝わりづらいから、わかりにくいから、ということでそういうものを排除していったら、嘘と極端な例しか残らないのに。


 正しいか、正しくないかで全部のものごとが決められないのと同じように、エロもそんな単純じゃない。あなたの考えた「わかりやすい答え」にあてはめるためだけに、エロを利用するのは、やめてくれって思う。