少女マンガこわい

★『会長はメイド様!』、9巻だけまだ読んでなくて、amazonでほかの本と一緒に注文して届いて読んだ(amazonで買わなくても今は本屋さんに全巻ダーッと並んでます)んですが、もう、私、ダメかもしれない。二次元の世界に生きる覚悟を固めないといけないかもしれないよ。


 とにかく読んでると萌えすぎるんだけど、男視点と女視点の両方で萌えるんだよね。いやどうなんだろう、男視点じゃないのかも。女が見ても主人公の美咲ってすごいけなげでかわいい、いいやつなんだよ。美咲を好きな拓海の気持ちもすごいわかるし、わ、わかるんだけど拓海に激萌えだし……。


 不思議なのは、こんなに拓海に萌えていて、ぶっちゃけガチで惚れているのに(自分から発情したメスの匂いがするよ!)、「自分は美咲にはなれないんだー」という方向にコンプレックスを刺激されたり、「拓海の心を独占している美咲がにくい!」という気持ちにはならないところだ。主人公に自分を重ねられるようにうまい調整がなされているんだよな、たぶん。作者が計算してそう作っているのではなくて、ただ真剣に描いた結果そうなっている感じで、美咲といういいやつを嫌うなんていう選択肢は、読んでると頭に浮かぶことすらないです。頭脳明晰で公明正大、合気道もやってて強い! でも最近の流行りとかには超うとくて、おしゃれとかそういうの全然ダメ! って、前半に自分を重ねられる要素はまったくないのに、後半には多少あるから、実際は似ても似つかないのに親近感が……。美咲の母親のほうがトシ近いのになー。


 こういう、二次元萌えっていうか、二次元キャラにガチで惚れている状態って、男の人がそういう状態になっててそれをネット上で書いていたりしても全然痛々しく感じないのに、三十路の独身女性、しかもエロライターが二次元キャラ、しかも高校生美形男子に萌えているって、自分でもなんかちょっとどうかと思ってしまうのはなぜなんだろう。でも読んでると心がうるおうんだよ! 現実はそんなにスウィートじゃないからさ。9巻読んでたらなぜかボロボロ泣けてきて自分がどうしたのか心配になりました。大丈夫!? 自分、大丈夫かー!! こういう少女マンガ的な幸せを自分がどれだけ渇望していたか、今さらながら自覚しました。今まで「そんなのありえない!」ととじこめてきた欲望が一気に開花しちゃったんだよね、たぶん。『エマ』とかではまだ時代とか国とかが違いすぎて自覚しにくかったんだけど(でも『エマ』もボロ泣き。すごい好き)『会長はメイド様!』でハッキリ自覚。


 『会長はメイド様!』は、すごくちゃんと女の夢みたいなものを描きつつ、そこにいろんな楽しいデコレーションを施してある、ほんとうに読むのが楽しいマンガで、描いてる人も、きっとたいへんだけど楽しいんだろうな〜というのが伝わってきます。絵柄は違えど、そのムードは『エマ』と似てる。この衣装とか、こういう設定とか、描くの楽しいんだろうな〜としみじみ思うし、自分も好きだからがっつり食らいついて読める!


 『会長はメイド様!』では、セックスっていうものが今のところ描かれてないんです。私は自分の性欲については、自覚してたし、それをなんとかしようとか、それに向き合おうとか、してきたつもりでそんなに悔いはないんだけど、少女マンガ的な自分の欲望については、すごい勢いでほったらかしてたんですね。そのことに気づいた33歳の昼下がり。もう無言でたばこをふかすしかない……フッ。私、どんなにありえなそうなことでも、自分が望んでいることは叶うかもって信じて行動したほうがいいと思ってるんですけど、恋愛に関してだけはそのことが正しいのかまったく自信ないわ……。


 でも、いくら現実がなまなましく毒々しくても、自分にとっては少女マンガのように思える瞬間って、あるよなぁ、とも思います。


 少女マンガ、こわいなぁ。恋愛のどんなおそろしさを描いたマンガより、私は『会長はメイド様!』のほうがこわいです。読んでて幸せすぎるんだもん。地獄のような現実よりも甘い甘い夢がおそろしい。