単体女優・企画女優

 夏目ナナ嬢を紹介する時に、姉ちゃん「単体女優」と書きました。「単体女優」と言われてもよく意味がわからないと思うので説明すると、AV女優には「単体女優」と「企画女優」があります。この言葉は、おそらく「単体作品に出る女優」「企画作品に出る女優」という意味からそう言われているのだと思います。「単体作品」というのがどういうものかというと、一人の女優さんだけで一本撮られている作品のことで、「企画作品」というのは、例えば「全裸オーディション(50人出てます)」とか、そこまで多くなくても数人の女優さんが出演しているもの、女優さんの名前でなく企画の面白さで売ろうとしているもの、とまずはおおざっぱに考えてください。
 「単体」と呼ばれる女優さんと、「企画」と呼ばれる女優さんの違いは何でしょうか。それはギャラです。単体と企画のギャラはケタが違います。その女優さんの名前だけで確実に多くの本数が売れる女優さんであれば、ギャラはそれに応じて上がりますが、そんな女優さんは滅多にいません。「単体」としてデビューできる女優さんは一握りです。
 では、スカウトされてきた時点で、もしくは応募してきた時点で、単体か企画かはどうやって判断されるのでしょうか。それは、所属事務所の判断で決まります。誰がどう見てもすごい美形な場合は単体だし、磨けば光ると判断して単体として売りだすこともあります。けれどそれはあくまでもプロダクションの人間数人の判断でしかありません。デビューしてみたら、企画のはずが妙に人気が出て、単体としての仕事が来てしまったりすることもある。逆に単体としてデビューしたものの人気が出ず、企画女優としてやり直すこともあります。
 ここ数年、にわかに目立ってきたのが「企画単体」、略してキカタンと呼ばれる女優さんたちです。彼女たちは企画女優としてデビューしながら、その個性や技術、美貌によって人気を獲得し、実力で単体に近い位置(一人で一本の作品が作られ、それに応じてギャラも上がる)まで昇りつめた人たちです。人の美醜の判断、売れる・売れないの判断は、ときにあまりあてになりません。あの孤高の龍眼女(2ちゃんのスレタイからいただきました)朝河蘭(姉ちゃんの運命の女です。大ファンだよ)でさえ最初は企画女優で、アロマ企画の「接吻カフェテリア」とか、顔に「私は変たい マゾ女」「汁便器」「一発10円」(わかってるなぁ……)とか落書きされる「変態づら」という作品とか(http://www.aroma-p.com/html/title/dvd/000101020205.htm 値段は高いけど、アロマにはその価値がある!)に出ていたのです。一年間の出演作品の本数をギネスに申請するほどの人気女優で、一時は及川奈央と人気を二分したほどの女優でさえ、最初は企画でデビューしてしまうこともあるのです。黒髪でハッキリしたエキゾチックな顔立ちだから、一般ウケはしないとふんだのかな。でもこれがすんごいベロキスするし、セックスのスキル、痴女の実力、ともにものすごかった。引退したときは、魂抜けたよ。
 姉ちゃんは、この「キカタン」と呼ばれる女優さんたちの中に、好きな女優がたくさんいます。企画でデビューし、頭角をあらわすには、自分のチャームやウリをはっきり自覚し、それを作品に生きる形で表現する必要がある。キカタンの女優さんたちのパフォーマンスは、見ていて気持ちがいいんです。美貌に甘えてセックスに手を抜くこともないし、自分に求められているものが何かを掴んで、しっかりそれをやる。「え〜こんなこと、できなぁ〜い」なんて、死んでも言わないような女優さんが多いんです。わりと最近で言うと、アドリブ力や役を掴む力が北島マヤ並みにある姫咲しゅり(責め役か受け役かで、声色すら変わる! 台本ないのに名ゼリフが出る!)、レズの神様と呼ばれ、自らレズ作品の監督も手がける三上翔子、洋ピンばりの喘ぎっぷりで高身長なのに態度がちっちゃくて可愛い立花里子、どこが企画なんだか説明してほしい美形の楓アイル、正直ここまでくると、企画と単体の差なんてないに等しいです。キカタンの女優さんには、たたき上げの苦労を知ってる謙虚さと、自分の力で人気を獲得したというまっとうな自信がある。自分の魅力が何なのかを知った女の輝きみたいなもんが、あるんです。それって、すごく良くないか? 「私は、一番美人じゃないかもしれないけど、でも自分は自分よ!」というささやかな自信を持ってがんばっている女優さんが、姉ちゃんにはすごい、かわいく見える。抱きしめて「おまえが一番かわいいよ!」と言いたくなります(そんなことをするとマネージャーさんに怒られますよ)。
 確かに誰がどう見てもパーッとスターのオーラが出ている人というのはいます。それこそ夏目ナナ森下くるみあいだゆあ南波杏などトップクラスの女優さんは100人の中にいても単体とわかるでしょう。そういう人は正真正銘、生まれついての単体だと思う。けれど、最近はセルビデオの世界で「単体ブーム」というのが起こっていて、もうとにかく何だって単体としてデビューしちゃってるような現状がある。「単体って、このコが……? 異議あり!」と申し立てたくもなるような場合も、あります。
 何も知らないようなカワイイ娘が、プロ意識なんてまったくなく、男に触られて「やだー、恥ずかしい」とか言って潮とか噴かされてるような単体デビュー作品に、ニーズがあるのはわかります。セックス上手い女とか、プロの凄いカラミに引いちゃう人がいるのも、わかる。男心は微妙なもんですから、自分より経験がなさそうな女がいいと思う人には、やる気やプロ意識がなかろうと「単体のデビュー作品」に手を出すでしょう。それはそれでいいけど、姉ちゃんは、最近のそういう単体作品が好きじゃないんです。かわいい女に生まれて、求められてセックスさせてあげることが当然だと思ってるような女のカラミは、イヤな感じがする。「やらせてあげてる」感じがするし「かわいいんだから、やってもらって当然」な感じもする。姉ちゃんは、そういう女の人が、かわいく思えない。自分が男だったら、絶対やりたくない。(ムカつくからめちゃめちゃにしてやりたいとは、思うかも。イヤがって閉じてる口元にたっぷり顔射して、そのブ××クヅラをばっちり撮影してやりたいね! でも最近はそれすら「おいしい」なんつって、でもウソっぽくて脱力しちゃうような女優さんも、いるんだよ)キカタンの女優さんの本気のセックスを見ているとすがすがしいほどエロくて、あれを見てしまうともう、半端な単体デビュービデオなんかムカついてしょうがないんです。なんつーか、全部手作りの幕の内弁当とコンビニ弁当が同じ値段だった、みたいな感じ。幕の内弁当作ってる人の誠意はどうなるんだよ! という気持ちだね。デビューしたてだから、ウブで素人臭い反応が見れるかといちおう期待をもって見るけど、多分普段男相手にそういうセックスしてるんだろうね、どうすれば「カワイイ」と思われるかを熟知した言葉や反応を演じるばかりで、変に慣れてて、セックスを見くびっている感じがする。本気で感じてなくてもバレないと思ってるんだろうけど、バレるよ。バレないくらいのレベルのものと、正真正銘本気のセックスを「プロのセックス」と、私は呼びたい。
 もちろん、全ての単体作品がそうではありません。単体といえども見た目だけでトップクラスの人気を獲得し維持していくのは非常に難しい。ちゃんとエロいセックスができたり、どこか内面の面白さが見えないと、ファンはつきにくいものです。現在名の通っている、ある程度キャリアのある単体の女優さんはみんなそれだけのものを持っているし、デビュー時からイキまくりだった坂下麻衣などの素晴らしい例もある。美貌も中身も、セックスの反応の良さも兼ね備えた女というのは、いるんです。ただ単体女優の全てがそうだとは限らない。「単体だからいい」「企画だからたいしたことない」という判断をするのは、意味がないことです。だからどの女優が単体で、企画で、キカタンなのかということは、見る側は知らなくてもいいと思う。それを知ることは「クラスで一番人気の女は誰か?」を知るのと同じようなことで、知ったって、自分が一番人気の女を好きになるとは限らない。案外、目立たない女がエロかったりするのもよくあることで。誰が単体か、企画か、ということを考えるよりは、自分がどんな女が好みかを考え、また、「好みじゃないはずなんだけど……なんか気になる」という揺れる感覚を大切に、自分にとって特別な女優を探してみてください。