★『君に届け』最新刊を買うまえに我慢できずコンビニでパラパラめくっていたら即座に泣けてきて「キャスターマイルドください」って言う声がふるえたわ……。


 それにしても最近、『君に届け』や『ちはやふる』などの、読んでてへこまない、すこやかな作品を心が求めていて、あまり重く暗い展開の作品を読みたい気持ちにならない。


 『君に届け』は、なんとおつきあいするのにいちいち男を親に紹介したりする。形式じゃなくて、恋人のことは好きだけど、親のことも好き、うそついたり、隠したりしたくないっていう「親への愛情」がちゃんと描かれる。


 私の世代の青春物語って、こうじゃなかった。いかに親に隠れてキスしたりセックスしたりするかが主眼で、まー私にはそんな機会はなかったのでよくは知らないしそういうマンガもムカついて読まなかったけど、なんか、恋愛感情ってもっと汚くて親には絶対許されないもので、隠さなきゃいかんというような感じもあったし、親に言うとかだっせー、みたいな感じもあった。


 『セックス・アンド・ザ・シティ2』ですら、一夫一妻で浮気しない純愛の結婚こそが幸せというメッセージを放つ現代では、『君に届け』って、ものすごく王道な気がする。からかう気も、皮肉を言う気も起きない。私も好きだもん。私は浮気したりされたりとか、結婚を前提とせずに信頼関係が壊れたらそのまんま別れるとか、そういう積み上げていかない泡沫のような恋愛に疲れてきたから『君に届け』がとても好きだし、このまっとうさに惹かれるんだけど、実はこの気持ちって、今の中学生や高校生も同じなんじゃないかと思うことがある。自分が実際に体験したかどうかは別として、世の中の汚い部分や、裏切りを当然とするような価値観って、きっと知る機会はあるんじゃないのか。それに、汚い部分や裏切りでなくとも、叶わない恋愛できつい思いをすることはある。そういう思いを、一生のうちにもう何度も何度もしたくない。そんな気持ちで、ひとりの人を大事にしていく恋愛をしたいと思う方向に、多くの人が向かってるんじゃないかとちょっと思う。ま、最近の若人のことは知らないけどさ……。


 みだれまくった価値観のあとに、すこやかなものが来るのかな。でも、いったい、どんなふうに以前は、みだれまくっていたんだろう? みだれまくったと言えるほどみだれまくりそこなったことが、今思えばなんだか損した感じもする。いっそ処女だったら後悔なんてしないんだけど中途半端に中古になってさぁ。いいですけどね別に! いまさら爽子になれるわけでもないし! コミックス巻末の爽子商法にはのらないよ!


 昔は傷ついたり苦労したりして一人前みたいな思想があったけど、今はやみくもに数打って傷ついたり苦労したりすることよりも、何かを大事にするための苦労や、そういう繊細な苦労、人の気持ちをわかるための努力みたいなもののほうがずっと大事っていう感じがします。丁寧にする苦労や努力かな。