川村記念美術館/マーク・ロスコ展

mamiamamiya2009-03-18

 行きました。泣きました! 観てください!(おすぎ風に)


 川村記念美術館は千葉県の佐倉にあって、近いと言えばそりゃ金沢21世紀美術館とかよりは全然近いんですけど、都内から行くと微妙に遠くて、小旅行といった感じになります。それで二の足を踏んでたんですが、いや〜、行ってよかった。


 まず美術館の建物ですが、これ、綾辻行人の文庫の表紙だよね。中も密室殺人起きて見取り図書かれそうなムードいっぱいの構造(茶室とかもある)。ミステリ好きにはたまらないものがあります。


 ま、そんなことは置いといて、とにかくコレクションが素晴らしい。ジョゼフ・コーネルの箱はもちろんですが、シュルレアリスムや現代美術の作品が多く、それがなんか趣味が一貫してる感じがするんですよね。「有名だから買った」じゃなくて「これはいい」と誰か一人の人思って集めたという感じがちゃんとする。初代社長の趣味のようですが、センスいいです。すくなくとも私はとても好み。


 バーネット・ニューマンの巨大な作品を観るためだけの部屋(ニューマンの部屋)があったり、日本美術の部屋の奥に茶室があって、白鳥が泳ぐ庭園を眺めながら抹茶をいただいたりできるのもいいです。


 さらにミュージアムショップ(2つあって、2つとも品揃えがまったく違う)の品揃えがすっごいいいの。こんなん東京でも見たことねーよ、ナディッフにもスパイラルマーケットにもなかったよ、というのがいくつもあったり、なぜかかわいい帽子(手作りっぽい。しかもお手頃価格。3000円とかなんだよね)が売ってたりしてたまらないです。


 と、美術館としても、庭園を散歩しにちょっとした遠足として行くにも最高に楽しい場所なんですが、ですが、それどころじゃなかった。


 川村記念美術館の今の展覧会は『マーク・ロスコ展』なんです。私はこの展覧会を、新宿駅の広告で知りました。かっこいいなと思った。それでまったく知らないマーク・ロスコという人の絵を観てみようと思ったわけです。


 こんな絵です↓
 http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/index.html


 ロスコの「シーグラム壁画」だけを高い位置に展示した、天井の高い、広い部屋があって、そこに入っていくとき、嗚咽がこみあげてきて、我慢しても涙が出て、書いててなんと陳腐な表現だと自分でも思うけど、本当にそうだった。すぐなんでも「感動した」「泣いた」としか書けないなんてお前ほんとライターかよって言いたくもなりますけど、ゲージツに鳥肌立ったり泣いたりする瞬間は、気持ちいいんです。


 最近は「感動」っていう言葉が安っぽい言葉だと思われているけど、お涙頂戴ではない、わけのわからない感動っていうのは、気持ちいいことだと私は思う。マーク・ロスコの絵をいいあらわすことなんてできないし、その絵の何に感動したのかを言葉で説明するほうがずっと、安っぽいかもしれない。そうは言っても泣きながら頭の中で言葉の断片がグルグルグルグル回ってしまうんだけど。マーク・ロスコがこのように自分の絵が展示されることを望みながら、この展覧会を観ることなく自死したとか、そういう物語じゃない部分で、ただ絵の圧倒的な迫力だけで泣かされた。音楽で言うなら、音圧だけでドーンと圧されて参っちゃうような、そんな感じでした。


 人間がこんなものを作れるんだ、という、原始的な感動です。ただ光を見た、みたいな感じ。天から降り注ぐ光じゃなく、一人の人間が全身全霊で発散した光。


 ま、そんなことAVライターに言われてもね〜って感じでしょうが、前にNHKの『新日曜美術館』でここの常設コレクションのジョゼフ・コーネルの箱の作品の特集をやっていて、ゲストの男性の一人(どなたかお名前を失念してしまいました。この中のどなたかです→http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2008/0921/index.html)が、「僕はこの人の作品を観たとき、はじめて作品を『欲しい』『所有したい』という気持ちになったんです」とおっしゃっていて、私はその言葉にとても共感できた。


 「よくわからない気持ち」を体験することが、私にとっては怖いことでもあるし、気持ちいいことでもある。その「よくわからない気持ち」を、私はおそらく評論や批評の形では書けないでしょう。向いてないし、知識ないし。ただ「コーネルの箱が欲しい」という言葉が、コーネルの作品のある一面をひとことで言い表しているのと同じように、「そうだよね」と人が思うような、共感の言葉を探すことは、ちょっとならできるのではないかと思って、何なんだろうこれって思いながら、呆然として、で、結局全然言葉が出てこないのもまた「気持ち良」かったりするわけで、変だけどそういうのが楽しくて美術館にゆくのが好きなんだなと思う。


 春のお出かけには、もってこいのコースです。小旅行気分で、ぜひ出かけてみられてはいかがでしょうか。