『ウチの嫁さんはAV女優です。』大塚咲

 私は大塚咲さんのファンで、それは好みの顔で美人なのにセックスがものすごいエロいからなんですが、その大塚さんが本当のご主人と共演するドキュメント作品ということで、観ました。当初は取材をしたいと考えていたので資料としてメーカーさんに送っていただきましたが、ちょっと良くないことを書くので、改めて買いました。


 旦那さんがカメラを回した私生活(自宅)での貴重なカットや、普段の大塚さんの姿が観れるし、もちろん、こういう作品であるからには、仕掛けが用意されていて、そこで感情が爆発するシーンもあり、二人のお互いへの愛情が伝わってくるシーンもあり、こういう作品を観たことのない人には十分ショッキングな内容だと思います。


 でも、私はこの作品、ちょっと好きになれないんです。それはドキュメントとして露悪的なものだからとか、そういう意味じゃない。露悪的になるに決まってるんだけど、それを撮る側が悪人に徹しきれてないというか、覚悟が足りないように感じました。大塚咲に嫌われようがどうしようが撮るんだ、というところまで来ていないというか。泣かせて、本音のような言葉を引き出して、生活を見て、そこで満足してる感じがちょっとする。


 もちろん、それだけでも今までの大塚さんの作品にはなかったことだし、ショッキングなことです。でも生身の大塚咲が、旦那さんまで担ぎ出してこういう企画をやると言ってくれたのに、ここまでの内容だったらAVとしてもドキュメントとしても中途半端に思えます。悪い作品じゃないし、いいとこまで行ってるのに……! と思うから余計に「なんでここで終わっちゃうの!」という不満が出てくるんでしょうけど。


 大塚咲さんという人は、いろんなものを引き出すのが難しい女優さんなのではないかと思います。本人はかなり素直に作品に取り組んでいるし、気持ちをオープンにしている印象を受けますが、彼女本人が踏み込むことを許している領域までしか踏み込んでいないような、そういう不満が残りました。ここまで撮れたら満足しちゃう気持ちもわからなくもないです。私が監督だったら、ここまで撮れたら大満足で大喜びしちゃうと思う。でも、これは千載一遇のチャンスだったんです。大塚咲を撮るための、二度とないチャンスだった。だから、もっと上を目指して欲しかったと、どうしても思ってしまう。誰のどんな作品にも負けないような、これが大塚咲なんだという、そういうものを見せてほしかったと思ってしまう。代表作はこれだ、と、本人も周りも認めるような、そういう作品になってほしかったという気持ちが残ります。ひとことで言えば、もったいないと感じます。もっと、こっちが見るのが怖いような部分が、きっと大塚さんにはあると思う。


 引っ越しの段ボールが積んである雑然とした部屋の中で、セックスしたあとに大塚さんがカップヌードルを食べてるシーンとか、おおっと思うシーンは多々あり、大塚さんの私服もたんまり見れたりして、嬉しかったですけどね。大塚さんに対する愛情のある作品だとは感じました。愛情があるがゆえにここまでなのだとも感じました。難しいですね、この作品。良かった、だめだった、のひとことでは、どっちにしても片付けられないです。気になる方はぜひ、ご覧になってください。


※追記・初監督作品だそうです。だったらすごい! よくぞここまで撮ったもんだなぁ……というレベルです。今後どんな作品を撮られるのか、とても楽しみです。