『裸の大陸 ダンディver.』

★『裸の大陸 ダンディver.』というAVを観たのですが、これがいろいろと面白かったのでご紹介してみます。


 『裸の大陸』というのは、知ってる方はとっくにご存知だと思いますが、「AV女優を連れてアフリカに行って、現地の昔ながらのしきたりを守って暮らしている部族の人たちと交流&セックスする」というのが基本コンセプトの作品です(『裸の大陸チャリティープロジェクト』は、アフリカはアフリカですがボランティアに行く作品で、ちょっと違います)。


 で、この『裸の大陸 ダンディver.』ですが、まずパッケージに写ってる女優さんの名前が表にも裏にもどこにもまったく書いてない。だ、誰だ!? と思いながら観始めてもテロップ一つ出ず、とりあえず「梅宮」という名字で呼ばれているので梅宮さんという人だということしかわからない(エンドロールでやっと「梅宮リナ」さんという人だとわかります)。作品中、本人が自分の名前を言ってると思われる箇所があるのですが、そこには全部ピー音が入っているので、たぶんあんまり芸名をふだん使ってないんでしょうね。


 しかし、この、パッケージに名前すら出されない梅宮さんがスゴイんです。


 まず、梅宮さんは骨の髄までギャル、前世もギャルだし来世もギャルだろうとしか思えないギャルギャルしいギャルです。面接シーンから始まるのですが、部屋に入るなり「マジすいません〜ってか起きた時間11時15分でマジびびったんですけど〜」みたいな感じで椅子に座って片足立て膝。これが座りの基本ポーズらしく、アフリカでもずっとこの座り方。レストランでもどこでも同じです。アフリカロケだと聞くと「なんか『裸の大陸』って聞いてネットで調べたらブログに『突然シャワーが出なくなった』とか書いてあって〜。シャワー出なくなったら超マ○コ臭くなりそうじゃん!」とストレートな疑問をぶつけ、「ラクダ乗りたい」「基本ポジティブだから何も考えてない」と発言。部族の人とセックスするという話を聞いても「(セックスは)アイサツだよね〜」と器のデカいところを見せてくれます。


 海外旅行は初めてという梅宮さん。空港の航空会社のカウンターで待つ間も、脚が手持ち無沙汰(脚なのにおかしな表現だ)なのか、腰より上の高さのカウンターにヒザをひっかけて立ってます。しかし、そんな梅宮さん、なんと出国審査で止められ、待たされた挙げ句「出国させられません!」と言われ、一同出発を見合わせ出直すことに。


 「なんで止められたの?」と聞かれると、その理由は「パスポートの空いてるページあんじゃん(出国・入国スタンプを押すページ)。あれ破ってメモ代わりに使ってたんだわ〜。そしたらダメだって」。一週間後に再発行されたパスポートと比べると、厚さが2分の1ぐらいになってました。それを見せながらいかそうめんをムシャムシャ……。太い! 人間が太い!


 そしてナミビアに着いても、外にしかないコンセントにドライヤーやコテを挿して外で見事に巻き髪を仕上げ、さらにケータイで出国前から続いている彼氏とのケンカをメールで続行。彼氏の発言に「マジめんどくせえ!」と言いつつご飯をパクパク。


 すごいのは、彼女、ADに対して怒ってたりはするんだけど、旅行中の食事とか移動とかには文句言わないんですよ。口は悪いけどそういうのは言わない。で、偏見がないせいなのか、言葉しゃべれないのにナミビアのヒンバ族の村に行ってもいきなり赤ん坊抱かせてもらって「超カワイイ〜!」とナチュラルに交流してるんです。ヒンバ族の男を誘うために、原っぱで全裸でオナニーして、見に来た男たちにセックス交渉して断られても、全然気を悪くしない。銀色のローターを見て「これが怖かったのかなぁ?」とか言ってる。


 200分という長尺で、セックスは日本人スタッフ(監督?)と一回、ヒンバ族の人と一回の二回のみで、正直エロ要素は薄いんですが、セックスするまでの間たっぷり梅宮さんを見ている分(最初のセックスまでかなり長いです)いざセックスとなるとちょっと「え、梅宮さんヤるの?」みたいな気分になってドキドキしました。けっこうエロいしな。


 と、ギャルの梅宮さんが面白いということばかり書いてますが、この作品は、こういう梅宮さんの言動にからかうようなテロップを入れたりしないんです。アフリカでケータイを離さない梅宮さんに対して監督は「ケータイで話すと、せっかくアフリカで価値観の違うものを見たり体験したりしてるのに、日本の感覚に戻ってそれをネタみたいに(彼氏や友達に)話して笑って終わりになってしまうから、ケータイを一度離そうよ」と真摯に訴えたりします(「ムリムリムリ! ありえねーから!」とバッサリ断られてますが)。梅宮さんがギャルだからといって、監督はその言動をバカにしたり、笑ったり、見下すような目線では全然見てない。だから不快感なく観れるんです。


 もしこれが、梅宮さんというギャルを「面白い人」として笑い者にしようとするような撮り方や編集がされていたら、観るのも不快だっただろうし、こんなに楽しかった作品として書くことはできなかっただろうと思います。ほんの少しのサジ加減なのですが、そのサジ加減に品があるんです。


 監督は梅宮さんに対し、「監督と女優」という距離感をきちんと持って接している。女優さんを「○○ちゃん」と下の名前で呼んで、すごい仲良くなって撮るっていう方法もあるし、そのほうが良い場合もあると思いますが、この作品では、監督と梅宮さんがきちんと「他者」であることも、作品の品の良さにつながっているように思えました。


 本物のキリンやシマウマを見て「何!? 何!? マジで!? 超ありえないんだけど! マジでー!」と写メりまくる梅宮さん。梅宮さんはアフリカの現状を目にしても、聞いても、泣いたりはしません。それで感動したりもしません。でも普通に、日本にいるときとまったく同じ態度でアフリカにいて、ヒンバ族の人にもびびったり過剰に丁寧に接したりもせず、普通に接している。帰りに自分が持ってきたギャル服をみんなにあげて、それをヒンバ族の人が着てたりして、「バイバーイ!」って別れて、普通に帰る。別に感動したりもしないし、本当にただ普通にしてる。それがすごくいいんです。最後に感動のラストシーンが待ってるほうがウソ臭いし、そんなの別に欲しくない。サラッとしてるけど、でもなんかいい感じの気持ちが観たあとに残ります。


 途中、ヒンバ族の村に連れて行ってくれるガイドが現れず、あやしいガイドに捕まりそうになり、一同困って観光支局に行くのですがそこが土曜で閉まっていて「明日また観光支局に行くしかない」と監督が言うと、梅宮さんは「明日日曜だよ? 土曜閉まってるってことは土日休みじゃね?」とするどいツッコミを入れてくれたり、なかなかカッコいいんですよね。ほんと動揺しないし、器がデカいんだよなぁ……。笑いながらも最後は「梅宮ってコ、いいコだなぁ」と思わずにいられません。アフリカでも常に9センチはあるヒール姿なのもスゴイ! そして必ずつけまつ毛つけて、アフリカでも超長いスカルプ(だと思う)ネイルで、ヒンバ族の人たちに爪を興味津々に見られたり「そのまつ毛本物なの?」とか聞かれたりしてました。


 先月に発売されてる作品です。レンタルでもあるかな? よかったら探してみてくださいね。
 http://www.choi-waru.com/title/2009/08/dandy_155.html