★「三十路の独身女はめんどくさい」「重い」って、もうその意見が古くさく感じるほどによく言われてますが、人妻人気の理由のひとつは「同じ年代の独身女がめんどくさいから」なんじゃないかと思ったりします。極端に若い女性よりとっつきやすい年齢で、めんどくさくないほう、って思うと自然と人妻になってしまうというか。


で、実際、どうめんどくさいわけ? と詰め寄りたい気持ちでキーキーしながら三十路独身女として生きてるわけですが、最近ふと「三十路の独身男ってめんどくさい」と思ってしまい、なんかこう、共感と断絶を同時に感じる出来事が……。


どうめんどくさかったかというと、まぁ、三十路独身男性のほんとに氷山の一角ではありますが「オシャレで、インテリアとかにもこだわりがある。もちろん簡単に同棲とか結婚とかしなさそうだし、生活に濃い関係の女が入り込む余地がない」「自分は頭良くてセンスもいいと思ってるから、こちらの意見を見下し気味に聞いてくる。こっちはがんばって『キャーすごーい!』とか持ち上げてるから疲れてくる」「そこそこモテてるし、男は10歳ぐらい年下とでも結婚できる可能性あるから焦ってない。今彼女がいなくても『条件的にオレはまだまだ選び放題な立場』と知ってるから余裕しゃくしゃくで、たとえ同じ年でも三十路女のことを下に見てくる」「プライドが高い」「長年のフリーダムな独身生活ゆえ、浮気を我慢するという発想がない」みたいなことですかねぇ。


みんながみんなこうでないのはわかってるんですが、カルチャー系こじゃれた男子で非モテじゃない人って、こんな感じの人が多い印象なんですよね。「自分が束縛されるめんどくささ」「結婚を迫られる重さ」ではなく、つきあってもなんというか踏み込まず踏み込ませずで実りがなさそうなうえ、機嫌を良くしてもらうためにすごく気を遣うというか。いや、気を遣う必要がないのはわかってるんだけど、プライドが高い人が近くにいるとついねぇ。三十路の高いプライドへし折ると大変そうじゃないですか。


そして怖いというかスゴイのは、こうやって挙げためんどくささが全部自分の身にもバッチリあてはまっていて、「めんどくさい」とか言うたびにそれが刃のついたブーメランになって自分の元へ華麗にターンしてくることだよ! 「そこそこモテてるし、男は10歳ぐらい年下とでも結婚できる可能性あるから焦ってない。今彼女がいなくても『条件的にオレはまだまだ選び放題な立場』と知ってるから余裕しゃくしゃくで、たとえ同じ年でも三十路女のことを下に見てくる」が「そこそこモテてるし、モテなくなる未来のことなんか考えたことないから、女性誌の『これからは四十路モテ』みたいなアオリを真に受けていつまでもイケてると思ってる」に置き換わるぐらいで、あとはまったく同じ。めんどくさいって言われるの、痛いほどわかる。そして独身女性の不倫率の高さも頷けてしまうんだよ……。


ものすごく簡単に言うと、自分でもわかってるけど「協調性がない」ってことなのかもしれない。独身の人間に欠陥があるなんてもちろん思わないけど「結婚してない人間は会社の中で信用されない」とかって、そういうことなのかもなと思ったりする。ひとりの楽しさを存分に知ってしまってて「これを捨てなきゃいけないんだったら、捨てる価値があるだけのめくるめく恋愛を頼むよ!」みたいなところが自分にはあって、年齢を重ねるごとに恋愛市場での自分の価値が下がることは知ってるのに要求はエスカレートしてる。恋愛経験は若いときよりも増えているから「あれよりも楽しい恋愛を!」と思う気持ちまである。


「自分の条件の低さを棚に上げ、条件のいい相手を待ってるから、結婚できない女が増えてる」なんていう意見を見ると、ぜんぜんちがうんだよね、と思う。条件の問題ではたぶんない。心の問題がすごく大きいと思う。さらに「少子化社会での、無意識に感じるプレッシャー」もあるんじゃないかとちょっと思ってる。もちろん「結婚」に対するプレッシャーもある。結婚「できない」女、なんていう言い方はプレッシャー以外のなにものでもない。心の問題だから、どんなに理性で自分の条件がどんどん悪くなっていくのを自覚してても、どっかでパッと結婚しよう、っていう気にならないんじゃないかな。


若いときは若いときで「いつまでも若くないんだぞ」と脅されて、10代のときは20歳になると人生終わりみたいに思って生きてきて、20代のときは30歳になるともう恋愛もセックスもできないみたいに思ってびびりまくって27から悲壮な覚悟を決めて生きてきて、このうえ「結婚できない」なんてことに脅されるのは、もうまっぴらごめんという気持ちもあるかな。できなくて結構、私の市場価値なんか、誰も認めてくれなくて結構、「女の市場価値」なんていう概念につきあわされるのはもう結構、とちょっと思うし、これぐらいの年齢になると市場価値なんていう漠然としたものよりも、そろそろ老眼はじまるんじゃないの? とか、そろそろ7の倍数の年齢がやってくるなとか(養命酒のCMをごらんください)具体的な健康や容色のおとろえのほうが怖かったりもする。怖いから、誰かと寄り添って生きてみたいという気持ちは、多くの人が持っていると思うけど、だったらどうしてこうなんだろう? うーん……。