ミューズ願望

 『監督失格』で気になるのは、平野ギャル(平野さんのファンの女の子)がどれだけ出現しているかということだ。今なら、今ならわたし桃井かおりばりのボブで煙草ふかしながら「女にはね、あるのよね。ハメ撮り監督のミューズに憧れる季節が……」って、言えるっ……! 心で血の涙流しながらうら若き乙女たちに忠告したいことがあるんだけど、それは「ミューズになりたがるような女は、永遠にミューズにはなれない」っていう事実だYO! 


 「クリエイターになりたい」「イケメンになりたい」「美人になりたい」世の中にはさまざまな欲望や夢があふれてますが、居酒屋のカウンターでつくねに玉子の黄身つけながら「なりたーい☆」って語ってる人がそういうものになれるとあなた思いますか? 世の中、本気で美人になりたい人は即自宅に帰って「整形外科 口コミ」とか検索してるし、クリエイターになりたい人は「箭内道彦 事務所 求人」とかで検索するところからスタートトゥデイなわけですよ。私だって、私だって美人にもクリエイターにもミューズにもなりたいですけど、もう佐々木希みたいになれなかったという残念な事実が判明して、残酷な神が支配するわけですよ! 「ミューズになりたい」、そんなたわごとを34年間(一週間以内に35歳になるのに往生際悪く34歳表記)言い続けてもきた。ミューズになりたいと思う人に会う機会とかもあった。でも、でも、そういうクリエイティブ上流階級の人間に接して思うのは、圧倒的人間力の差っ……! 自意識が複雑骨折してるような人間が、ミューズになんかなれるわけねー! というカイジの鉄骨渡りばりの絶望! 


 そもそもなんで「ミューズになりたい」なんて思ったのか考えてみてごらんなさいよ。自分が思いっきりミューズ体質じゃないからでしょ? 本物のミューズは自分がミューズだということすら特に意識せず、駅の階段とか登れないような靴でタクシー乗って、冬でもドアtoドアの移動だからノースリーブとか着て、メニューも見ないで「わたし今日ウサギが食べたいな〜。ピンクのシャンパンある?」って言ってますよ!(貧民が想像したせいいっぱいの贅沢)「ミューズになりたい」なんてことを思う時点で「私はミューズ体質じゃありません」と認めてるようなもの。


 心が折れた? 折れましたか? わたしもっとずっと折れ続けてますよ。心が折れてるみなさんの先輩として、心折れ界のトップランナーとして独走中ですよ。だけど、だけどっ……心が折れたって人間死なないんですよ。心がどんなに血を流しても胃に穴とかそうそう開かないし、げっそりしたつもりでも1kgもやせてないんですよ! つらい気持ちをポエミーにTwitterに書きなぐって朝になって恥ずかしくなってアカウント消去してその日の夜には新しいアカウント取り直してすべてがなかったことみたいな顔してる程度で、傷ついたとか心折れたとか言ってちゃいかんですよ。


 この残酷で不平等な世界を呪いながら、自分の持っている材料で、どれだけの快楽が得られるか、どれだけの面白いことが見れるか、そういうことを考えて綾波レイばりに心に包帯巻きながら生きてくしかないですよ。あれっなんかちょっとしたグチをつぶやくつもりが、すごいシリアスな話に……。『闇金ウシジマくん』を読んだせいで心がむしばまれてつい……。最近は『GANTZ』読みました。最初はヤラせそうでヤラせない展開にイライラしてましたが、すっごい面白かったです! こんな壮大な話をテンションまったく下げずに最後までカタつけようとしてるところにもう、震えますね〜。『GANTZ』と『進撃の巨人』の最新刊をたて続けに読んだので、夢に異様な造形の大きい人が出てきて「利息はトゴ(十日で五割)な」とか言いそうです。がんばって明るい話にしようとしたのに、ならなかったのでもうあきらめることにします。みなさん今日も元気でがんばりまっしょい!